3行まとめ
- 北インドの広域帝国(マウリヤ→クシャーナ→グプタ→デリー・スルタン→ムガル)と、デカン・南インド諸王権の並走が骨格。
- インド洋の季節風交易が香辛料・綿布・宗教(仏教・ヒンドゥー・イスラーム)を運び、港市とスリランカが結節。
- 近代は東インド会社→英領インド、1947年の分離独立・1971年バングラデシュ成立を経て、民主化・成長と地域課題へ。
ミニ年表(ざっくり)
前4〜前2世紀 | マウリヤ(アショーカ)/沿岸港市の発達 |
1〜3世紀 | クシャーナ/サータヴァーハナなど地方王権 |
4〜6世紀 | グプタ—古典文化の成熟 |
7〜13世紀 | チャールキヤ・チョーラ・パーラ/イスラーム勢力の進入 |
1206–1526 | デリー・スルタン朝 |
1526–18世紀 | ムガル帝国/マラーター・シク勢力の台頭(ヴィジャヤナガル 1336–1646) |
1757–1858 | 東インド会社支配(プラッシー1757/反乱1857) |
1858–1947 | 英領インド |
1947〜 | 印・パ分離独立/バングラ1971/スリランカ1948 |
南アジア通史を俯瞰
南アジアを時系列で読む
前3世紀、マウリヤ朝が北インドを統合し、アショーカ(在位前268–232)が仏教保護と碑文政策を展開。1〜3世紀、クシャーナが北西を支配しヘレニズム・中央アジア文化を媒介、デカンではサータヴァーハナなど地方王権が台頭。4〜6世紀のグプタ期には古典サンスクリット文化が成熟し、貨幣経済と都市も発達する。南ではチョーラ(9〜13世紀)がタミル海域で遠征・商業航路を掌握。1206年、デリー・スルタン朝が成立しイスラーム王朝が北インドを統治、地方ではベンガル・デカン諸政権が並立。1336年にヴィジャヤナガルが南で興り、ムスリム諸政権と拮抗する。1526年、ムガル帝国が創始され、アクバル(1556–1605)期に地方支配と宗教政策を整備、17世紀には農村生産と都市消費が拡大する一方、マラーターやシクが18世紀に台頭。1757年プラッシーで東インド会社がベンガルを掌握、1857年の反乱後に英領インド(1858–1947)へ。1947年、インドとパキスタンが分離独立、1971年に東パキスタンがバングラデシュとして独立、スリランカは1948年に独立。戦後はインドの緑の革命(1960年代)と1991年の経済自由化、パキスタンの政軍関係、スリランカ内戦(1983–2009)、ネパールの王制廃止(2008)などを経て、今日の焦点はインド洋シーレーン、エネルギー・水資源、IT・製薬・繊維といった産業連関にある。
古代(〜10世紀)
北インド | マウリヤ(前4–前2C)→ クシャーナ(1–3C)→ グプタ(4–6C) |
デカン・南インド | サータヴァーハナ等の地方王権/チョーラ前史 |
海域(インド洋) | 季節風交易(紅海‐アラビア海‐ベンガル湾)と港市の分業 |
外来・回廊 | 西アジア・中央アジアを介した仏教・美術・貨幣の流入 |
中世(10〜14世紀)
北インド | デリー・スルタン前段/パーラ・ラシュトラクータ等の並立 |
デカン・南インド | チョーラ(9–13C)海上覇権/ホイサラ・ヤーダヴァ |
海域(インド洋) | タミル・グジャラート商人とムスリム海商の結節 |
外来・回廊 | トルコ系・アフガン系勢力の進入、イスラーム化の進展 |
近世(14〜18世紀)
北インド | デリー・スルタン(1206–1526)→ ムガル(1526–)/マラーター・シク台頭 |
デカン・南インド | ヴィジャヤナガル(1336–1646)/デカン・スルタン諸国 |
海域(インド洋) | 欧商参入(ポルトガル→オランダ・英)と綿布・香辛料の再編 |
外来・回廊 | 銃砲・銀の流入、通貨経済の拡大 |
近代(19世紀〜1945)
北インド | 東インド会社支配(1757–1858)→ 英領インド(1858–1947) |
デカン・南インド | 紡績・鉄道・植民地財政の浸透 |
海域(インド洋) | 綿布・茶・ジュート・鉱産の世界市場編入 |
外来・回廊 | 民族運動・会議派・全印ムスリム連盟の伸長 |
現代(1945〜)
北インド | インド独立(1947)/緑の革命(1960s)/経済自由化(1991) |
デカン・南インド | IT・製薬・自動車の集積(バンガロール等) |
海域(インド洋) | シーレーン・港湾(チョーバハール等)とエネルギー輸送 |
外来・回廊 | 印パ関係/バングラデシュ(1971)/スリランカ内戦終結(2009)/SAARC(1985) |
よくある誤解とチェック
- 「北=中心・南=周辺」:×。南は海域覇権(チョーラ・港市)で主役級。
- 「イスラーム化=一気」:×。地域差が大きく、港市から段階的に浸透。
- 「英支配=直線的」:×。会社支配→反乱→直轄の段階と地域差を要確認。
- 「分離独立=宗教だけ」:×。植民地統治・政治交渉・難民移動が絡む複合現象。
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