東アジアへのルート(先史):北・南・高地の三つの回廊

先史時代、現生人類が東アジアに拡散する際には、北回廊(内陸・ステップ)南回廊(インド洋〜東南アジア沿岸)、そして高地回廊(青蔵高原縁辺)が 重層的に関与したと考えられます。古DNA・考古・古環境の三本柱から、到達時期や経路、適応(EPAS1など)を概観します。

三つの回廊(概説)

北回廊(内陸・ステップ → アルタイ → モンゴル → アムール)

  • 内陸のステップ帯を介して、アルタイ〜モンゴル〜アムールへ至る広域のネットワーク。
  • モンゴルの後期更新世遺跡群(例:Tolbor-16)などが北回廊シナリオと整合。

南回廊(インド洋沿岸 → 東南アジア → 華南沿岸)

  • インド洋〜東南アジアの沿岸・河谷をたどって華南へ。内陸側ではラオスの Tam Pà Ling など。
  • 華南沿岸の具体的な接続性は時期・海況で変化し、地域差・議論が残る。

高地回廊(青蔵高原の縁辺)

  • 高地適応(低酸素)と結びつく動態が注目されるルート。EPAS1 にデニソワ由来ハプロタイプ。

代表サイト/指標

Tianyuan Cave(北京郊外)約4万年前の現生人類古DNA(東アジア初期の確実例)。
Tolbor-16(モンゴル)北回廊文脈で言及される後期更新世の要地。
Tam Pà Ling(ラオス)内陸の現生人類化石(年代幅あり)。
Fuyan Cave(湖南・道県)8〜12万年前の早期主張(歯)だが年代解釈に大きな議論。
EPAS1(代表点:ラサ)高地適応に関わるデニソワ由来ハプロタイプ。

内容の確度(A/B/C)

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  • A 公的・一次級で直接確認(一次が複数一致でもA)
  • B 複数一次情報からの強い推定(反論や未確定部分あり)
  • C 仮説寄り(一次が乏しい/矛盾/作業仮説段階)
  • A:Tianyuan(~40ka)の古DNAにより、東アジアにおける後期更新世の現生人類の存在は確実。
  • A:チベット人の高地適応 EPAS1 はデニソワ由来のハプロタイプ。
  • B:東アジア拡散における北回廊+南回廊の複線モデル(地域・時期で寄与差)。
  • B:Tam Pà Ling など内陸証拠は南回廊の内陸分岐を補強(年代幅に留意)。
  • C:Fuyan(湖南・道県)の8〜12万年前主張は強い反証・再検討の余地が大きい。

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関連トピック

参考資料

  1. Review:East Eurasia への拡散(古DNA・考古の統合) — リンク
  2. Tianyuan(北京郊外, ~40ka)古DNA — PNASCurrent Biology
  3. 北回廊・モンゴル(Tolbor-16 など) — Sci Rep
  4. 南回廊・内陸(Tam Pà Ling, ラオス) — PNASNat Commun 2023
  5. Fuyan(湖南・道県)早期主張(議論あり) — Nature 2015 概要
  6. 高地適応 EPAS1(デニソワ由来) — Nature 2014PNAS 2021
  7. (背景)琉球の先史航海・実験考古 — World Archaeology 2022Science Advances 2025
  8. (日本側の形成史へ接続)日本列島の三分系統モデル — Sci Adv 2021Nat Commun 2024