現代日本人は、縄文(先住狩猟採集民)+弥生期に導入された北方系の農耕民+ 古墳期以降に流入した東アジア大陸(沿岸)系という三層(トライアンスストリー)でおおむね説明できる。 島弧全体での比率は地域差が大きく、琉球・北海道では縄文寄与が相対的に高い。近年は Biobank Japanと古DNAの統合により、表現型(例:BMI傾向)に関わる祖先成分の影響も解析が進む。
なにが“確実に”わかった?(要点)
※このサイトでは、資料の信頼度(A / B / C)を簡単なラベルで示します。
詳しくは 凡例:、資料の信頼度(A / B / C)へ →
- A 公的・一次級で直接確認(一次が複数一致でもA)
- B 複数一次情報からの強い推定(反論や未確定部分あり)
- C 仮説寄り(一次が乏しい/矛盾/作業仮説段階)
三層モデルが主流 A | 縄文+(弥生)北東アジア系+(古墳〜)東アジア沿岸系。古DNA12体を含む分析で初出、その後の大規模データでも妥当性が検証。 |
地域差 A | 琉球・北海道は縄文寄与が高め、本州中部〜近畿は相対的に低いなど、島弧内で連続的勾配。 |
大陸側の具体像が前進 B→Aへ更新中 | 古墳期以降に入った「大陸系」の一部は中国・山東の沿岸古代集団に由来と再構成(約1600〜1400年前の混合推定)。 |
弥生の具体例 A | 山口・土井ヶ浜のYayoi個体ゲノムは、韓半島集団と近縁な成分を含み、三層モデルに合致。 |
表現型への影響 B | BBJ×古DNAの統合で縄文由来の変異が個体差・地域差を説明し、BMI上昇傾向との関連が示されるなど、健康関連の示唆も。 |
内容の確度(A / B / C)
- A:三層モデル(縄文+弥生北東アジア+古墳期以降の大陸沿岸)。
- A:島弧全体の地域差(琉球・北海道で縄文寄与高め)。
- A:弥生個体(山口・土井ヶ浜)の韓半島近縁と三層整合。
- B:古墳・歴史期に入った大陸系の具体ソース=山東沿岸(時期推定 1600–1400年前)。
- B:縄文由来変異とBMI傾向の関連(統計学的には再現されるが、機序は検討継続)。
- C:細かな年代・地域ごとの比率の“地図化”や、局所適応の遺伝子単位の機能解釈。
ルート・時代モデルとの接続
- 弥生(稲作拡散):北東アジア(朝鮮半島経由)寄与が増える=対馬回廊との整合。
- 古墳〜歴史期:東アジア沿岸(山東など)からの寄与が追加=北ルート内陸+沿岸航路の往来強化と整合。
- 地域差:琉球・北海道で縄文比率が相対的に高い=琉球・北回廊の独自性・時間差の反映。
注意点(よくある誤解)
- 「二層(縄文+弥生)」だけでは古墳期以降の沿岸大陸系の寄与を取りこぼす。
- 地域ごとの割合は連続的で、都道府県=固定比率ではない(個体差と混合史の積み重ね)。
- 健康・体質との関連は環境依存が大きく、祖先成分=運命ではない。
関連トピック
アメリカ大陸への拡散(先史) 旧石器 アメリカ
氷期末〜末期にかけて、北太平洋の沿岸ルートと内陸の無氷回…
ホモ・サピエンス日本列島へのルート:三つの回廊と証拠 旧石器 全国
先史時代に現生人類が日本列島へ入る主要ルートとして、 北…
東アジアへのルート(先史):北・南・高地の三つの回廊 旧石器 東アジア
先史時代、現生人類が東アジアに拡散する際には、北回廊(内…
出アフリカのルート|沿岸とレバント、複線で広がった現生人類の旅 旧石器 グローバル
現生人類(ホモ・サピエンス)はアフリカ起源。世界規模の拡…
参考資料
- Cooke et al. 2021 Science Advances:三層モデルを提示(古DNA12体)。本誌 / PMC
- Yamamoto et al. 2024 Nature Communications:BBJ×古DNAで全国規模検証、縄文由来変異132座、BMIとの関連。記事
- Kim et al. 2024/2025 Journal of Human Genetics:土井ヶ浜・弥生個体の全ゲノム、韓半島近縁・三層整合。記事
- Liu et al. 2025 Nature Communications:山東沿岸の古代ゲノムから、古墳期以降に流入した大陸沿岸系の実体と時期を推定。記事
- Koganebuchi et al. 2023 J Hum Genet:琉球のゲノム分化と歴史推定。PubMed