海進の前夜:MWP-1A/1Bと「内湾のタネ」

ー 縄文のはじまり(G4)|海進の前夜 ー

-12,000〜-8,000年(G4)は、氷期が終わって海面が急上昇→海岸線が後退→谷の出口(谷口)に“内湾のタネ”ができ始めた時期。
ただし、どれくらい海が入ったかの細かい線引きは地域差大で、場所ごとに証拠で詰める段階です。

30秒要点

  • 急上昇:MWP-1A(約14.6–14.3 ka)は数百年で十数m級の海面上昇。MWP-1B(約11.5–11.1 ka)は存在・規模に議論あり。
  • 地形の要点:海岸線後退で、河口〜谷口に内湾・溺れ谷(リアス)の原型が形成。最盛像は中期完新世だが“芽”はG4で始まる。

ミニ用語

MWP(Meltwater Pulse)氷床が一気に溶けて、海面が“短時間でドンと”上がった出来事の呼び名。その代表が MWP-1A と MWP-1B。
MWP-1A最終氷期末(約14.6–14.3千年前)の急速な海面上昇イベント。数百年で10–20m級。規模推定が強固。
MWP-1B約11.5–11.1千年前の上昇候補。存在・規模に議論あり。
谷口山地の谷が終わって、平地や広い低地に“開く”場所。谷→平地”の出口(地形の折れ目)
河口川が海や湖に注ぐ所(デルタやエスチュアリー)。河口=“川→海”の出口。

本論

1)何が起きたか:海面の急上昇

氷床が急速に融け、短期間で海面が大きく上がりました。とくにMWP-1Aは数百年で十数mという非常に速い上昇です。 一方でMWP-1Bは時期・規模に異説があり、地域ごとの相対海面(地殻のたわみ・地震性上下など)も重なって解釈が分かれます。

2)どこが“内湾のタネ”か:谷口という節点

山地から海に開く谷の出口(谷口)に海水が入り込むと、入江・ラグーン・溺れ谷の原型ができます。 背後低地や旧河谷がセットになると資源性が高まり、後の縄文海進期に沿岸志向の暮らしを支える場になります。

海面が上がると、海に近い谷口が“水で満たされて”→ 溺れ谷(リアス)や小さな内湾・ラグーンの入口になりやすい。
※だから地図では、谷口=拠点(節点)、河口=海との接点で役割を分けるとわかりやすい。

関連ノート(対応リスト)↔ 本論

  • 太平洋岸の谷口クラスター(房総〜三浦):太平洋岸節点候補の抽出
  • 日本海岸の谷口クラスター(越後〜能登):日本海岸節点候補の抽出
  • 沿岸資源モデルと初期移動(コースタル志向):沿岸志向の暮らし点→線の仮説提示(03ルート)
  • 沿岸低地の堆積・ボーリング代表例:仮説裏づけのデータ集め(05遺跡)

このセクションの下位ノート

対応マップ

本稿はG4を扱います。

このセクションのピンは #89224F
レイヤーは01/03/04/05/10です

初期表示レイヤー:01, 03, 04, 05, 10 / 版:v20250930

根拠と限界

  • 根拠(A):U/Th・14C年代に基づくMWP-1Aの時期と十数m上昇、海岸線後退の一般的帰結。
  • 限界(B):地域差(GIA/テクトニクス)により相対海面は一律でない。地域ごとに“ずれ”が生じる。
  • 論点(B/C):MWP-1Bの存在・規模は研究間で相違。

確度A/B/C

※このサイトでは、資料の信頼度(A / B / C)を簡単なラベルで示します。
詳しくは 凡例:、資料の信頼度(A / B / C)へ →

  • A 公的・一次級で直接確認(一次が複数一致でもA)
  • B 複数一次情報からの強い推定(反論や未確定部分あり)
  • C 仮説寄り(一次が乏しい/矛盾/作業仮説段階)
  • A:MWP-1Aの存在・年代幅・十数m上昇、ならびに“海岸線後退→内湾原型”の一般帰結。
  • B:日本列島の谷口クラスター抽出と地域差の方向性(地形・堆積など複数指標の整合)。
  • C:個々の谷口での当時の入江規模や具体的な遷移ルート(未掘削・未検証の部分)。

参考資料