ー 縄文のはじまり(G4)|海進の前夜(コースタル志向の検討)ー
海面が上昇したG4(-12000〜-8000)では、谷の出口(谷口)やラグーン、河口の周辺に資源が集まりやすくなります。 本ノートは、そうした「資源の節点」をたどる沿岸志向の初期移動モデルを、地図を引用しながら整理します。
コースタル志向とは:沿岸の資源が集まる節点(谷口・河口・ラグーン)を拠点に、短距離で渡り歩く移動・生業の傾向。
本論と確度
※このサイトでは、資料の信頼度(A / B / C)を簡単なラベルで示します。
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- A 公的・一次級で直接確認(一次が複数一致でもA)
- B 複数一次情報からの強い推定(反論や未確定部分あり)
- C 仮説寄り(一次が乏しい/矛盾/作業仮説段階)
1)資源モデルの骨格:潮間帯・ラグーン・河口
- 潮だまり・干潟・海藻帯・汽水域は、貝・魚・海藻・水鳥・シロギス類など食資源が豊富(A)。
- G4では「谷口+背後低地」に小さな内湾の“芽”ができ、資源集中の場が点在(B)。
関東沿岸・海面帯(概略)(B), 日本海沿岸・海面帯(概略)(B)
2)節点(Node):谷口を拠点化する
- 房総・谷口A/三浦・谷口B(太平洋側)〈B〉
- 能登・谷口C/越後平野・河口D(日本海側)〈B〉
これらは海の入り込みやすさ・背後低地の有無・淡水アクセスがそろいやすい地形要件(B)。
3)ルート仮説:節点間を“短距離で”つなぐ
太平洋岸・仮説ライン1/日本海岸・仮説ライン2。
太平洋岸・仮説ライン1/日本海岸・仮説ライン2(概念接続):節点(太平洋=谷口、日本海=谷口・河口)間の概念的つながりを示すガイド線です。海上の直線は図示便宜であり、当時の陸域や実際の連続航路を意味しません(確度C)。実際の移動は沿岸の短距離ホップ/季節移動を想定し、堆積コア・微化石・地形で段階的に検証します。
4)季節移動と滞在様式
春〜夏は干潟・浅場の資源、秋〜冬は河口や背後低地の資源へと季節回遊する想定(B)。 ただし、具体的な“動線の形”や“滞在の長さ”は地域データ待ち(C)。
5)裏づけ:堆積コア・微化石・貝塚の時期
- コアの砂⇄泥の互層と微化石の群集置換(内湾性⇄外洋性)で、内湾化のタイミングが読める(B)。
- 初期の貝塚・沿岸遺構が増えるのはG4の後半〜次期にかけて地域差あり(C)。
対応マップ
参考資料
- Lambeck et al. 2014, PNAS — LGM以降の相対海面(RSL)枠組み。
- Deschamps et al. 2012(PANGAEA要旨) — MWP-1Aの時期と振幅。
- Lin et al. 2021, Nat. Comm. — MWP-1Aの寄与源と“指紋”の統合。
- Umitsu 1991, 第四紀研究 — 日本沿岸の完新世RSLと海岸地形レビュー。
- Habu 2004, Ancient Jomon of Japan — 縄文の生業・定着の俯瞰。