ー ラピタ文化:太平洋拡張の跳躍台|黒曜石と貝のネットワーク ー
物資の“動き”は、タラセア黒曜石源(ウィローム半島)からの長距離移送で最もはっきり見えます。ビスマルク産の黒曜石がサンタクルスまで大量に届いており、分配・交換のルートが機能していたといえます。
対応マップ
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ピンの色:
#C2315C
ソースの特定と“遠さ”
タラセア(ウィローム半島)の黒曜石は地球化学的に識別可能で、リーフ諸島を含むサンタクルス群の遺跡からも多数検出。ネンドー/サンタクルス(ラタ)周辺の点でも確認され、2,000km級の“点と線”が描けます。
交換の実像:ダウン・ザ・ライン
交換は「ダウン・ザ・ライン」=島ごとに分配しながら次へ渡す方式が基本と考えられます。たとえばタラセア黒曜石源(ウィローム半島)から出た石は、ネンドー/サンタクルス(ラタ)→テウマ(エファテ島・バヌアツ)→コネ(ニューカレドニア)…のように連鎖し、距離が伸びるほど量が減り小片が多くなるのが特徴です。さらに後期には、遠距離のやり取りが短い区間へと収縮(縮退)し、近場中心のやり取りが目立つようになります。拡張初期の広域ネットワークと対照的です。
貝製品とのセット
貝製装身具(トロカス〈Trochus=トップシェル〉等)は、軽くて加工しやすく壊れにくいため、島から島へ運ぶ“港の流通財”として最適でした。ビスマルク起点タレパケマライ(ムサウ諸島・Eloaua)でも装身具や加工痕が見つかっており、黒曜石(刃物材)と並ぶ交換セットだったことを裏づけます。(確度B)
確度 A/B/C
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- A 公的・一次級で直接確認(一次が複数一致でもA)
- B 複数一次情報からの強い推定(反論や未確定部分あり)
- C 仮説寄り(一次が乏しい/矛盾/作業仮説段階)
- タラセア由来の遠隔分布:A(ソース同定)
- ダウン・ザ・ラインの一般化:B(複数地域の符合)
- 後期縮退の時期・幅:C(地域差が大)