後漢書|東漢(25–220)を総括(八志補入で制度も読める)

東漢(後漢)を光武帝から献帝まで通観する正史。范曄(5世紀)の編纂に、劉昭が司馬彪『續漢書』の八志(30巻)を補入して現在の体裁となり、政治・制度・列伝の三面から東漢を俯瞰できる。

基本情報

対象年代東漢(光武帝〜献帝)。おおむね 25年〜220年 をカバー(建武中興〜漢の滅亡)。
成立時期5世紀(范曄が本紀・列伝を編纂) → 6世紀前半(劉昭が 八志(30巻) を『續漢書』(司馬彪)より補入し注補)。
編者范曄(398–445)撰。主要叙述は范曄の編纂による。体裁補完として、劉昭(梁・6世紀前半)が『續漢書』の八志(礼・楽・天文・五行・地理・百官・食貨・刑法等)を採り入れて整備。注釈は唐の章懷太子・李賢による校注が基本。

体裁・構成

本紀(10)皇帝・皇后紀(帝紀9+皇后紀1〔上下に分冊〕)。
志(八志・30巻)制度・学術・地理・官制・食貨・刑法などの総説(劉昭補入・司馬彪『續漢書』所出)。
列伝(80)将相・儒林・外戚・宦官・羌胡・西域・匈奴ほか。

※『漢書』にある表は後漢書には基本的に置かれない(年表参照は他書・各紀伝を横断)。

該当巻の例

🇯🇵 『後漢書』東夷列伝(倭)

57年(建武中元二年)、倭の奴国が後漢に朝貢し、使者は「大夫」と自称。光武帝が印綬を賜与し、外部からの首長権威の承認が記録された。

107年(永初元年)、倭国王・帥升らが朝貢し、生口160人を献上。継続的な使節往来と、複数国を束ねる指導力の存在がうかがえる。

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主な注釈

  • 李賢(章懷太子)注(唐):後漢書本文の基幹注。典故・人名・地理の注記が充実。
  • 劉昭注(梁):八志(30巻)の採録・注補。制度・地理の参照で必須。

よくある誤解と注意

  • 范曄だけで完結した→ 正しくは 范曄(5世紀)+劉昭(6世紀前半) の二段構成で現在の体裁に。
  • 後漢書にも『表』がある→ 基本は 本紀・志・列伝 構成。年表整理は他史料・各紀伝の突合で。
  • 八志は范曄の自」→ 司馬彪『續漢書』の志を、劉昭が補入(30巻)。

参考資料