三国遺事|仏教色の濃い“遺聞集成”で伝承を網羅

高麗後期の僧・一然(1206–1289)が編んだ、三国期の伝承・説話・逸事の集大成。5巻2冊・9篇(王歴/紀異/興法/塔像/義解/神呪/感通/避隠/孝善)という独特の構成で、檀君伝承など伝説期から統一新羅・後三国期に及ぶ素材を蒐集する。本文は漢文。現存本は16世紀刊。

※使い方ヒント:地名・寺塔・僧伝などは『三国遺事』、制度・年次は『三国史記』で補完。

基本情報

対象年代伝説期(檀君伝承など:紀元前2333)〜後三国期(10世紀:936後三国期の帰結=高麗への統一)までの遺聞を収録。実用上の主射程は三国〜統一新羅。
成立時期1281–1285年頃の編纂(高麗・忠烈王期)。現存最古の版本は1512年(規章閣本)。
編者一然(1206–1289)。高麗の名僧。仏教的関心と古伝承の収集を基調に、多様な史料を取捨・分類して編成。

体裁・構成

5巻2冊・9篇王歴・紀異・興法・塔像・義解・神呪・感通・避隠・孝善。
巻と篇が交差する独特の配列。
宗教・文化素材が多い仏教受容・僧伝・霊験譚・寺塔記・孝子説話など、制度正史に出にくい記事が充実。

該当巻の例

該当する人物ミニはまだありません。

よくある誤解と注意

  • 「公式正史」ではない → 『三国史記』のような本紀・志・表・列伝の正史体例ではなく、説話・霊験譚を含む“遺事”集成。制度・編年の照合は『三国史記』等と必ず並読。
  • 伝説素材を含む → 檀君条など神異・起源譚は史実断定不可。地名・仏教伝来記事は他史料・考古と三点照合で運用。
  • 現存本は後世の刊本 → 1512年規章閣本が基礎。語句・字様は版本差あり。

参考資料