📍考古の前提知識 — “もの・場所・時間”で読む

考古学は「もの・場所・時間」で読む

地面から出たもの(出土品)、それが見つかった場所(遺跡の種類)、そして時間(いつごろ)。この三つをそろえると、過去のくらしが立体的に見えてきます。

もの(出土品・作り方・DNA)

出土品(馬具・土器など) — finds

指すもの土器・石器・金属器・装身具・馬具など。
根拠材質や形・模様の違い=作られた時期や地域のちがい(比較で推定)。
土師器/須恵器、はにわ、鉄の刀子、馬具(轡・鐙)。

工房・生産跡 — workshop

指すもの登り窯・鍛冶炉・鋳型・大量の失敗作や削り屑。
根拠炉の構造・焼け土・道具痕から、何をどう作ったかが読める。
須恵器窯、鉄の鍛冶炉、玉作工房の砥石列。

ゲノム(古代DNA・骨資料) — genome

指すもの人骨・動物骨・歯のDNA、骨の形や同位体。
根拠近縁関係や移動・食事がわかる→人の移住や交流の道筋を推定。
古代の混血の割合、海産物中心の食生活など。

編年・型式(編年整理・型式論) — chronology

指すもの出土品の形の変化や地層の重なりから、「相対的な順番(いつ)」を決める道具。
根拠下の地層ほど古い/形は少しずつ変わる→A→B→Cとならぶ(セリエーション)。
土器の口縁が「直→やや反る→大きく反る」と移る。

場所(遺跡の種類・スケール)

遺跡(集落・祭祀含む) — site

指すもの住居跡・作業場・祭祀の場などの生活の舞台。
根拠柱穴・溝・土坑・器物のまとまった配置→何をしていたかが読める。
竪穴住居跡、掘立柱建物、祭祀遺構(器物のまとまった埋納等)。

古墳 — kofun

指すもの墳丘・埋葬施設・副葬品を持つ墓(単体)。
根拠墳形・石室・副葬品の組み合わせ=地位や年代の手がかり。
前方後円墳・円墳・方墳、石室の型式。

古墳群 — kofun-group

指すもの近くにまとまって分布する古墳のセット。
根拠大→中→小の並び、築造の波→地域の政治関係・首長層の変化。
首長級→家臣層へと規模が小さくなる並び、築造の波。

都市遺跡(宮殿・街区) —urban

指すもの道路・区画・大建築がそろう計画都市・都城・官衙。
根拠条坊や区画=政治・経済の中心の証拠。
都城の条坊、宮殿区、官衙群。

城塞・防御施設 — fortification

指すもの堀・土塁・城壁・山城・環濠集落。
根拠防御の向きや出入口=当時の脅威や戦術を反映。

巨石・ピラミッド・神殿 — monument

指すもの儀礼・権威を示す大型構造。
根拠規模・整形技術・配置=信仰と動員力の大きさ。
巨石列石、墳丘、神殿基壇。

洞窟壁画・岩面画 — rock-art

指すもの岩や洞窟面の絵・刻線。
根拠顔料や重なり・モチーフ=信仰や生活環境を反映。
狩猟・動物モチーフ、手形、幾何学模様。

沈没船・海底遺跡 — shipwreck

指すもの船体・積荷・港湾施設。
根拠船の構造と積荷(陶磁器・貨幣など)=交易路と時期の特定。
沿岸の難破船、港湾遺構、錨・係留施設。

時間(「いつ?」を決める)

  • 編年:順番を並べる(相対年代)。
  • 型式:モノの特徴でグループ分け(Type A/B/C…)。
  • 手順:
    • 地層を見る:下の層ほど古い。
    • 形の変化を見る:流行は少しずつ変わる(スマホが角ばる→丸くなる、みたいに)。
    • 並べ替え(セリエーション):同じ特徴が“山”になる並びがいちばん自然=時間の流れ。
    • 他の手がかりで固定:炭の放射性炭素年代・年輪年代・文字史料・貨幣の年号などで“絶対年代”を数点固定して、全体の物差しを作る

誤解しがち:「編年=西暦」ではない。編年は順番、西暦は別の手段で固定します。

ミニ用語集

出土品掘って出てきたモノ全般。形や材質の比較が手がかり。
遺構地面に残る“あと”(柱穴・溝・炉など)。
編年(へんねん)相対的な順番づけ。
型式モノの形のタイプ分け。
セリエーション特徴の増減の山ができるように並べる方法。
絶対年代西暦など実際の年。放射性炭素・年輪・文字史料で決める