3行まとめ
- 一次資料=出来事に同時代・直接に関わる資料(原文書・遺物・記録・地図・碑文・統計など)。
- 何が一次かは「問い」次第(例:『日本書紀』は8世紀の編纂史料としては一次、5世紀の同時代史料ではない)。
定義と境界(一次/二次/三次)
| 区分 | 中身 | 例 | ポイント |
| 一次 | 出来事・対象と同時代 直接に生じた痕跡 | 古文書・法令・日記・書簡 碑文・木簡 出土遺物 統計原票 当時の地図・写真 | 真正性(本物か) 同時性(どの時点か) 出所(伝来/所蔵)を確認 |
| 二次 | 一次資料を解釈・翻訳・編集した成果 | 研究論文・史料集の校訂・現代語訳・解説書 | 学術的に最重要な相棒。 翻訳は二次であることに注意 |
| 三次 | 事典・年表・教科書などの総覧 | 百科事典・ハンドブック・用語辞典 | 入口として便利。出典(一次・二次)へ辿る導線に使う |
※「一次かどうか」は研究テーマとの距離で決まる(同時代・直接性)。
同時代なら種類に関係なく一次?
- 一次かどうかを決めるのは「同時性と直接性」。資料の種類(正史・日記・公文書など)そのものではない。
- 同時代に直接つくられた資料なら、正史でも日記でも公文書でも一次資料になる。
- ただし、後代編纂の正史は当該事件に対しては原則二次。中に含まれる「原文書の引用(逸文)」は一次的部分として扱う。
具体例(使い分けのコツ)
- 『日本書紀』(720)は8世紀の編纂史料としては一次。ただし、5〜6世紀の出来事に対しては原則二次(中の詔勅引用は「逸文=一次的部分」)。
- 公家日記・寺社日記は当日の動静を記すため一次。ただし写本は版系確認。
- 官報・告示・太政官日誌(近代)は一次。Web転載は二次なので、原画像・号数を示す。
主な入口(日本史・考古の定番)
- 国立公文書館デジタルアーカイブ:公文書・太政官日誌・法令・図。
- 国立国会図書館デジタルコレクション:古典籍影印・古地図・官報など。
- 国文学研究資料館「新日本古典籍総合データベース」:古典籍(写本・版本)の画像・書誌。
- 全国遺跡報告総覧(奈良文化財研究所):発掘調査報告書(PDF多数)=考古一次データの入口。
- 文化遺産オンライン/博物館DB:遺物画像・基本情報(収蔵番号)。
- CiNii Research/IRDB:論文・史料集・機関リポジトリ(一次への手がかり)。
※古代史では『古事記』『日本書紀』『万葉集』等は文献一次だが、叙述対象の古い時代に対しては同時代一次ではない点に注意。
