ー 縄文のはじまり(G4)|海進の前夜(沿岸低地の堆積)ー
本ノートは、俯瞰記事「海進の前夜:MWP-1A/1Bと『内湾のタネ』」の考古データ編です。 沿岸低地の堆積コア・ボーリング記録を手がかりに、谷口に生まれた“内湾の芽”を検証します。
ミニ用語
堆積コア | 海や湖の底にたまった土砂を“縦に抜いた柱”。上ほど新しい層で、環境の変化が読める |
微化石の入れ替わり | 内湾を好む種類が増える→内湾化、外洋を好む種類が増える→外洋影響UPのヒント。 |
内湾性微化石 | 静かでやや薄い塩分を好む種(潟・ラグーン・汽水)。増える→内湾化のヒント。 |
外洋性微化石 | 塩分が高く波・流れが強めの場を好む種。増える→外洋影響UPのヒント。 |
砂・泥の互層 | 砂=強い流れ/泥=静穏の“記録”。互層の並びで環境の切替を読む。 |
リザーバー効果 | 海の試料(貝殻など)は“古い炭素”を含みやすく、実際より古く見える現象。 |
本論と確度
1)太平洋側:九十九里沖・堆積コア(仮)
砂・泥の互層、貝・珪藻などの微化石の変化から、内湾〜外洋の環境が入れ替わった時期を読み取ります。 年代(放射性炭素(^14C))は校正が必要で、沿岸の貯留効果(リザーバー効果)に注意。
参照地図:関東沿岸・海面帯(概略)(B), 谷口背後低地(概略面・関東)(C)
2)日本海側:富山湾沖・堆積コア(仮)
泥質の増加・有孔虫群集の変化・粒度の細粒化が、内湾化の進行を示す代表指標です。 日本海は地域差が大きく、日本海沿岸・海面帯(概略)は目安(B)。
参照地図:能登・谷口C(B), 日本海岸・仮説ライン2(C)
3)日本海側:佐渡沖・堆積コア(仮)
位置・保存状態・年代整合が未確定。補助的に扱います(C)。
参照地図:能登〜越後外縁一帯(B/C)
4)何を読むか(指標のまとめ)
- 微化石:珪藻・有孔虫の群集組成(内湾性⇄外洋性)〈B〉
- 粒度:細粒化=静穏域(内湾化)を示すことが多い〈B〉
- 有機物・含水率:湿地〜潟化の兆候〈B〉
- 花粉:沿岸植生の変化(周辺環境の裏付け)〈B〉
- 年代:14C/AMSの校正+リザーバー補正必須〈A〉
対応マップ
参考資料
- Deschamps, P. et al. (2012) — MWP-1Aの年代・規模。
- Lin, Y. et al. (2021) — MWP-1Aの寄与源・指紋。
- Lambeck, K. et al. (2014) — LGM以降のRSL総説。
- Umitsu (1991) — 日本沿岸の完新世RSLと海岸地形。