第9代 開化天皇(かいか)/ 稚日本根子彦大日日天皇

目次
  1. はじめに
  2. 基本情報
  3. 系譜
  4. 事績

はじめに

天皇の系譜や事績について、基本的に『日本書紀』に書かれている内容をもとにまとめています
考古学の発見や他の歴史資料とちがう点は、できるだけ注釈をつけて紹介

▲👤天皇の名前
諱(いみな):天皇が生きているときの本名(神聖なのでふだん呼ばない)
諡号(しごう): 亡くなったあと付けるおくり名
→ 漢風諡号 :「○○天皇」形式(漢字2字+天皇)
→ 和風諡号 : 例「神日本磐余彦天皇」のような長い和語名
💡 日本書紀が完成した720年には漢風諡号は無い(760年ごろ淡海三船がまとめて付けたと言われている)・和風諡号が記録に確実に現れるのは持統天皇(703年没)以降
*それ以前の天皇の名前が、諡号か本名(諱)かはっきりしないことがあります

▲ 📚「異伝」について
本文:皇后は〇〇の娘とする。
一書第一:△△の娘とする。
一書第二:□□の娘とする。

→ このように複数の別バージョンが書き添えられている
→ 豪族・土地の神・伝承にも気を配った結果(根回しの記録)

▲📘『新撰姓氏録』
→ 平安初期にまとめられた氏族リストで、古代豪族の由来や分類を知る重要な資料
👉 詳しくは 参照用ページ(史料のまとめ)/新撰姓氏録

基本情報

在位期間前158年~前98年(享年111歳)
『古事記』63歳
皇居春日率川宮(かすがのいざかわのみや:奈良市)
春日率川坂上陵(かすがのいざかわのさかのえのみささぎ:奈良市)
和風諡号稚日本根子彦大日日天皇(わかやまとねこひこおおひひのすめらみこと)
孝元天皇(第二皇子)
✅欝色謎命(うつしこめのみこと)
皇后✅伊香色謎命(いかがしこめのみこと)
✅丹波竹野媛(たにわのたかのひめ)
✅姥津媛(ははつひめ)

系譜

✅ 母:欝色謎命(うつしこめのみこと)
→ 兄:欝色雄命(うつしこおのみこと)は「穂積氏」の祖(ニギハヤヒ系の天孫氏族)
・・・穂積氏は奈良の山辺郡・十市郡本拠とした豪族(新羅征討、壬申の乱などに関わる)
→ 子:大彦命(おおひこのみこと)は、四道将軍(北陸)の一人
・・・阿倍臣、膳臣、阿閉臣、狭狭城山君、筑紫国造、越国造、伊賀臣ら7氏の始祖
・・・大彦命の娘:御間城姫(みまきひめは)は、第10代崇神天皇の皇后
・・・大彦命の子:武渟川別(たけぬなかわわけ:阿倍氏の祖)は、崇神朝では四道将軍(東海)の一人・垂仁朝では五大夫の1人!!
→ 子:稚日本根子彦大日々天皇(わかやまとねこひこおおひひのすめらみこと:第9代開化天皇)
→ 子:倭迹々姫命(やまとととひめのみこと)
📚「異伝」子:少彦男心命(すくなひこおこころのみこと:古事記では次男)

✅皇后:伊香色謎命(いかがしこめのみこと)は、第8代孝元天皇(父)の妃でもあった
→ 兄:伊香色雄命(いかがしこおのみこと)は、「物部氏」の祖(ニギハヤヒ系の天孫氏族)
→ 子:彦太忍信命(ひこふつおしのまことのみこ:武内宿禰の祖父)
・・・最初に第8代孝元天皇の妃となり彦太忍信命を産む
・・・武内宿禰は5代の天皇(景行・成務・仲哀・応神・仁徳)に仕えた伝説の忠臣
→ 子:御間城入彦五十瓊殖天皇(みまきいりびこいにえのすめらみこと:第10代崇神天皇)

🔍 ひとこと:ニギハヤヒ(饒速日命)
ニギハヤヒは、神武より先に大和に降りたもう一人の天孫(高天原から地上に降りた神)
→ 長髄彦の妹とニギハヤヒの子供:ウマシマジが、物部氏・穂積氏・采女氏などの祖とされる
→ 長髄彦(ながすねひこ)は、大和(奈良〜大阪北東部)を治めていた土着の豪族で、神武天皇の東征軍と戦った人物

✅ 妃:丹波竹野媛(たにわのたかのひめ)は、丹波大県主由碁理(丹波大県主の祖)の娘
→ 子:彦湯産隅命(ひこゆむすみのみこと:別名を彦蔣簀命(ひこもすみのみこと))
・・・丹波道主命(四道将軍の1人)の父を彦湯産隅命する📚「異伝」もある

✅ 妃:姥津媛(ははつひめ)
→ 兄:姥津命(ははつのみこと)は「和珥氏」の祖
・・・📘『新撰姓氏録』では姥津命(=彦姥津命)は天足彦国押人命(第5代孝昭天皇の皇子)の子
・・・同じ父の娘が、第6代と第9代の天皇に嫁いでいる❓😵
→ 子:彦坐王(ひこいますのみこ)
・・・彦坐王の子:丹波道主命(たんばのみちぬしのみこと)は、四道将軍(丹波)の一人
・・・丹波道主命の娘:日葉酢媛命(ひばすひめのみこと)は、第11代垂仁天皇の皇后(二人目)で第12代景行天皇の母

🔍 ひとこと:天足彦国押人命
→ 天足彦国押人命は「和珥氏」の祖とされる
→ 和珥氏は、奈良県天理市あたりを本拠とする「中央豪族」
・・・出自については朝鮮系鍛冶集団や海人族などさまざまの説がある
→ 和珥氏からのちに派生したのが、春日氏・小野氏など
▲ 春日氏は、蘇我氏の台頭期に衰退(春日大社がらみで藤原氏となにかありそうな気が❓🤔)
▲ 小野氏は、文化系エリート氏族(後の中央官僚として栄える)
→ 小野妹子や小野篁など有名人が多数

 5孝昭
天足彦国押人命(和珥氏の祖)
│ └押媛(6孝安の皇后・7孝霊の母)
└6孝安
└7孝霊

天皇の兄が「外戚」になるパターン

🔍 ひとこと:彦坐王(ひこいますのみこ)
『古事記』では日子坐王とあり、詳細な系譜が記される人物
開化天皇と意祁都比売命(おけつひめのみこと)との間に生まれた第三皇子で、子孫に神功皇后(息長帯比売命:おきながたらしひめのみこと)がいる
→ 子:丹波道主命(たんばのみちぬしのみこと)は、四道将軍の一人
・・・丹波道主命の娘:日葉酢媛命(ひばすひめのみこと)は、第11代垂仁天皇の皇后(後)となる
・・・丹波道主命の母は、息長水依比売命(アメノミカゲ(天之御影神)という神様の娘)
・・・この神さまは、近江国の三上山のご神体で、刀鍛冶の神
→ 子:狭穂姫命(さほひめのみこと)は、第11代垂仁天皇の最初の皇后
・・・兄:狭穂彦王(さほひこのみこ)に天皇殺害をそそのかされ失敗し、兄妹は自害
・・・二人の母は沙本之大闇見戸売(春日建国勝戸売の娘)

🔍 ひとこと:四道将軍とは
→ 第10代崇神天皇の時代に、国の四方(北陸・東海・西国・丹波)へ送り出した4人の将軍
→ 地方を平定し、勢力を一気に広げるためのチーム
→ 四道将軍が派遣された四つの地域は、前方後円墳が最も早く出現したエリアと重なる

事績

🌟 即位元年(太歲甲申年11月12日):即位

🌟 即位元年10月:都を春日(奈良県奈良市のあたり)の率川宮(いざかわのみや)に定める

🌟 即位6年1月:伊香色謎命(いかがしこめのみこと:庶母(実母ではない母))を皇后とした

🌟 即位28年1月:御間城入彦天皇(みまきいりびこのすめらみこと)を立太子

🌟 即位60年4月:崩御、115歳でした(孝元天皇22年16歳で立太子と矛盾する)

🕓 更新日:2025年7月3日

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