3行まとめ
- 先史のラピタ文化と外洋航海術がミクロネシア・メラネシア・ポリネシアを連結、オーストラリア先住民は数万年の連続史を持つ。
- 16〜18世紀に欧州来航、19世紀に捕鯨・宣教・植民地化・労働移動が進行。
- 20世紀は戦争・核実験・脱植民地化、21世紀はEEZと気候変動・回廊整備・地域協力が焦点。
ミニ年表(ざっくり)
先史 | オーストラリア先住(〜数万年前から)/ラピタ文化(c.1600–500BCE) |
13〜14世紀 | ニュージーランドにマオリ定着 |
16〜18世紀 | 欧州来航(タスマン1642/クック探査1768–79) |
1788 | 豪に流刑植民(ファースト・フリート)→19世紀植民拡大 |
1840 | ワイタンギ条約(NZ) |
19世紀後半 | 列強分割・労働移動(カナカ労働等) |
1942–45 | 太平洋戦争/戦後:信託統治・独立の波 |
1946–96 | 核実験(RMI・仏領ポリネシア等) |
1970s–1990s | 独立(FJI1970/PNG1975/SLB1978/VUT1980/KIR1979/TUV1978/WSM1962/NAU1968/PLW1994 等) |
1971 | PIF(太平洋諸島フォーラム)→21世紀:EEZ・気候変動・海洋回廊 |
大洋州通史を俯瞰
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ラピタ文化(c.1600–500BCE)は外洋航海術と土器文化を携えメラネシアからポリネシアへ拡散、星と波を読む航法が島々を結んだ。オーストラリア先住民は数万年前からの連続史を持ち、多様な言語と地域社会を形成。13〜14世紀にはニュージーランドにマオリが定着し、ポリネシア三角の縁が閉じる。16〜18世紀、タスマン(1642)やクック(1768–79)の来航で欧州の地理知が拡大し、19世紀は捕鯨・宣教・ビーチコーマーの活動とともに島嶼部の政治経済が再編される。1788年、オーストラリアに流刑植民が始まり19世紀に入植が拡大、1840年のワイタンギ条約でニュージーランドは英帝国体制に組み込まれる。19世紀後半には英・仏・独・米などがサモア、ソロモン、ニューカレドニア、ミクロネシア諸島を分割し、労働移動(カナカ労働)やプランテーションが進んだ。太平洋戦争は多くの島々を戦場とし、戦後は信託統治から独立の波が起こる。同時期にマーシャルや仏領ポリネシア等で核実験が実施され、健康・環境・主権をめぐる課題が残る。1970年代以降、フィジーやパプアニューギニアなどが独立し、ミクロネシア連邦・マーシャル・パラオは自由連合協定で自立。今日の焦点は、広大なEEZを資源・環境と両立させるガバナンス、気候変動による海面上昇、港湾と海上回廊、地域協力(PIF)と多国間関係である。
古代(先史〜15世紀)
オーストラリア | 長期の狩猟採集・火入れ・交易網(貝・石材) |
メラネシア | ラピタ拡散→島嶼農耕と首長制の発達 |
ミクロネシア | サタワルなど航海伝統/ナンマドール(ポンペイ島) |
ポリネシア | 三角(ハワイ・NZ・イースター)へ外洋航海、マラエ・神話体系 |
回廊・制度 | カヌー技術・星読航法・口承史の継承 |
中世〜近世前期(16–18世紀)
オーストラリア | 北岸にマカッサル人のテリピン(ナマコ)交易 |
メラネシア | 欧州接触前の地域秩序/サンドロトンガ等の首長制 |
ミクロネシア | スペイン航路の通過点化 |
ポリネシア | タヒチ等に欧州船来航、宣教前史 |
回廊・制度 | 測量・世界図の更新、航海誌の蓄積 |
近世〜近代初期(19世紀)
オーストラリア | 1788以降の植民・入植拡大、自治植民地化 |
メラネシア | 捕鯨・宣教・プランテーション、労働移動 |
ミクロネシア | 西サモア・ミクロネシアの分割支配化 |
ポリネシア | ハワイ王国の変容・仏領化の波(タヒチ等) |
回廊・制度 | 国際法の下での割譲・保護国化、条約と税関 |
近代(20世紀〜1945)
オーストラリア | 1901連邦成立、ANZACの戦争経験 |
メラネシア | 委任統治と軍政、戦域化 |
ミクロネシア | 日本委任統治期→戦後信託統治へ |
ポリネシア | 核実験の前史と軍事拠点化 |
回廊・制度 | 航空・無線で海域の時空間短縮 |
現代(1945〜)
オーストラリア | 独自外交・多文化化・先住民権利の回復過程 |
メラネシア | PNG1975・ソロモン1978・バヌアツ1980など独立 |
ミクロネシア | FSM/RMI1986・PLW1994(自由連合) |
ポリネシア | サモア1962・トンガ1970独立、仏領の地位問題 |
回廊・制度 | PIF(1971)・EEZ・気候変動対応・海洋ガバナンス |
よくある誤解とチェック
- 「小国=周辺」:×。EEZは巨大、海洋ガバナンスの中枢。
- 「欧州が“発見”」:×。先住の航海ネットは既に広域。
- 「均質な太平洋文化」:×。島嶼ごとに言語・制度・宗教が多様。
- 「核実験は過去」:×。健康・環境・主権課題は現在に連続。
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