ホモ・サピエンス日本列島へのルート:三つの回廊と証拠

先史時代に現生人類が日本列島へ入る主要ルートとして、 北ルート(サハリン→宗谷)対馬ルート(朝鮮半島→対馬→壱岐→九州)琉球ルート(台湾→与那国→…→沖縄→奄美→九州) の「三回廊」が広く議論されています。 地形(海峡の開閉)・古環境・人骨/遺跡・実験考古の四つ巴で検証します。

関連ガイド(前提/深掘り)

三つの回廊(概説)

北ルート(サハリン → 宗谷 → 北海道)

  • 最終氷期(LGM)の低海面で、サハリン〜北海道は接続/狭海化(宗谷周辺)。
  • 津軽海峡は陸橋化せずとされ、北海道—本州の行き来は渡海(時期により難易度差)。

対馬ルート(朝鮮半島 → 対馬 → 壱岐 → 九州)

  • 浅海域+島伝いで距離が短く、時期によっては狭海や陸橋の可能性が議論。
  • 釜山—対馬・対馬—壱岐・壱岐—九州は短距離の連鎖(ただし海況・時期で条件が変動)。

琉球ルート(台湾 → 与那国 → 石垣 → 宮古 → 沖縄 → 奄美 → 九州)

  • 深い海峡(黒潮流域)の横断が不可避で、計画的な渡海が前提。
  • 沖縄・八重山の旧石器人骨と近年の実験航海が、先史の海上移動能力を裏づけ。

主な人骨・遺跡(ピックアップ)

山下町第一洞穴(那覇)約3.2万年前の幼児人骨(山下洞人)。
白保竿根田原洞穴(石垣)およそ2.7万〜2万年前の人骨群(旧石器の「墓地」様相)。
港川人(沖縄本島南部)約2.0〜2.2万年前の複数個体の骨格。
岩宿遺跡(群馬)日本旧石器研究の転機となった標識遺跡(後期)。

内容の確度(A/B/C)

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  • A 公的・一次級で直接確認(一次が複数一致でもA)
  • B 複数一次情報からの強い推定(反論や未確定部分あり)
  • C 仮説寄り(一次が乏しい/矛盾/作業仮説段階)
  • A:沖縄・八重山の旧石器人骨(山下町第一洞穴・白保竿根田原洞穴・港川人)/ 津軽海峡はLGM(最終氷期最盛期)でも陸橋にならない見解。
  • A:サハリン—北海道はLGM期に接続/狭海化(宗谷周辺)したことを示す地形・古環境研究。
  • B:対馬ルートの完全陸橋の成否や時期は研究間で見解差(浅海化・狭海は確実)。
  • B:琉球ルートの具体ルートと到達タイミング(計画的渡海は有力、詳細は更新中)。
  • C:個別年代の細部(地点ごとの再測定・補正により変動しうる)。

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関連ノート

参考資料

  1. 海部陽介(インタビュー)「人類は3つのルートで日本列島へ」Japan Policy Forum(2020) — リンク
  2. Nakazawa, Y. (2017) “Pleistocene population history in the Japanese Archipelago” Current Anthropology — リンク
  3. Takakura, J. (2020) “Rethinking the Disappearance of Microblade Technology …” Heritage — リンク
  4. Igarashi, Y. (2016) “Vegetation and climate during the LGM …” Quaternary International — リンク
  5. Nakagawa, R. et al. (2010) “Shiraho-Saonetabaru Cave” Anthropological Science — リンク
  6. The University Museum, UTokyo “The Minatogawa Man” Bulletin 19(1982) — リンク
  7. Ryukyu航海 実験(国立科学博物館プロジェクト) — リンク
  8. Kaifu, Y. (2022) “A synthetic model of Palaeolithic seafaring in the Ryukyus” World Archaeology — リンク
  9. (背景)対馬・津軽の海況と古海洋:Zhao et al. (2022) Paleoceanography and Paleoclimatology — リンク
  10. (参考)対馬海峡の距離感 — リンク
  11. (最新の実験考古の報道まとめ) — ReutersNature News