【旅行ガイド編】ソウル五大宮殿+宗廟:歴史背景を歩く

なぜ宮殿は5つもあるのか?

朝鮮王朝は、火災や政変に備え、常にスペアの宮殿を用意する「両闕(りょうけつ)体制」をとっていました。正宮がダウンしても、即座に離宮(サブ)へ機能を移転できる、リスク管理の知恵です。

五大宮殿:それぞれの役割と物語

【正宮】景福宮(キョンボックン)— 王朝の顔

  • 特徴: 儒教の理想を形にした「左右対称」の完璧なUI。
  • 歴史: 1395年、朝鮮王朝の創始者である太祖・李成桂(イ・ソンゲ)によって建てられ、1592年の文禄・慶長の役で焼失後、270年間も放置。19世紀に「王朝の威信回復」を掲げ、興宣大院君によって強行再建。
  • 見どころ: 王の即位式が行われる「勤政殿(クンジョンジョン)」や、池に浮かぶ「慶会楼(キョンフェル)」は時代劇の象徴的な風景です。

【世界遺産】昌徳宮(チャンドックン)— 王が愛した癒やし

  • 特徴: 自然の地形を活かした「非対称」の建築美。
  • 歴史: 第3代国王である太宗(テジョン)が建て、景福宮不在の間、250年間メイン機能を果たした。王たちが最も長く過ごした実質的な拠点です。
  • 見どころ: 敷地の6割を占める王室専用庭園「後苑(フウォン)」は、王室のプライベートな庭園です。

【悲劇】昌慶宮(チャンギョングン)— 家族の絆と涙

  • 特徴:昌徳宮に隣接し、王族のプライベートな空間として機能。
  • 歴史: 第9代・成宗(ソンジョン)が、先代の王妃(大妃)3人のために増築した「親孝行」の宮殿。日本統治時代に動物園にされた悲しい過去を持ちます。
  • 悲劇: 正殿隣の文政殿前は、英祖が実の息子(思悼世子)を米びつに閉じ込め餓死させた、あの凄惨な事件の現場です。

【近代】徳寿宮(トクスグン)— 激動のハイブリッド

  • 特徴: 伝統建築と、1910年完成の西洋建築「石造殿」が共存する独特の景色。
  • 歴史: 文禄・慶長の役で他の宮殿が焼失した際、第14代・宣祖(ソンジョ)の避難先として始まり、後にロシア公使館に避難していた第26代・高宗(コジョン)が「大韓帝国」を宣言した場所。
  • もう一つの名「西宮」: 光海君によって仁穆大妃が幽閉された場所。彩色がない二階建ての「昔御堂(ソゴダン)」にその記憶が刻まれています。

【穴場】慶熙宮(キョンヒグン)— 静寂の西の宮殿

  • 特徴: かつては広大でしたが、日本統治時代にほぼ撤去。現在は一部が復元されています。入場無料で、都会の喧騒を忘れさせてくれる静かな聖域です。
  • 歴史:17世紀、光海君(クァンヘグン)がこの地に宿る「王の気」を感じて建てたとされています。

王朝のバックエンド:魂と国家の基盤

1395年、景福宮とほぼ同時に建てられました。儒教国家において「先祖を祀る場所(宗廟)」「土地の神を祀る場所(社稷)」は国家の根幹であり、ここが失われることは国の滅亡を意味しました。

宗廟(チョンミョ):王の「魂」が眠るアーカイブ

  • 本質は「中身(魂)」: ここに安置されているのは肖像画ではなく、魂が宿る位牌「神主(シンジュ)」。豊臣秀吉による朝鮮出兵で、建物が焼失した時も、位牌だけは守り抜かれ、500年の魂が今も受け継がれています。
  • 101mの水平拡張: 位牌が増えるたびに横へ継ぎ足された「正殿」は、世界でも類を見ない長さ。全19室に49位(王19、王妃30)の位牌が安置されています。
  • 神路(シルロ): 中央は「魂」、右は王、左は世子の専用ルート。今も「真ん中は歩かないで」と案内される、死者を最優先するI設計です。

社稷壇(サジッタン):国家のインフラ(基盤)

  • 役割: 土地と穀物の神を祀る祭壇。宗廟が「魂」なら、社稷は「食」という国家のインフラです。王が豊作を祈る儀式を行うシーンでよく使われます。
  • 時代劇のパワーワード: 臣下が叫ぶ「チョーーナァーー!宗廟社稷(チョンミョサジク)のために、どうかご再考(トンチョカヨ)を!」とは、「国家のシステムと基盤のために仕様変更を撤回してください!」という意味なのです。

隠れた名所:王室の「個人データ」

雲峴宮(ウニョングン)

興宣大院君(フンソンデウォングン)の私邸で。第26代・高宗が即位するまで育った場所です。大院君が摂政をしていた時期は、ここが王宮を凌ぐほどの実権を持っていました。隣接する洋館は『トッケビ』のロケ地としても有名です。

七宮(チルグン)

景福宮のすぐ隣(青瓦台の敷地内)にある、『トンイ』など、「王の生母でありながら王妃になれなかった7人の側室」を祀る祠堂です。青瓦台(旧大統領府)の観覧予約とセットで訪問するのがスムーズです。

楽善斎(ナクソンジェ)

昌徳宮内にあり、20世紀まで王族が住んでいた「王朝の終着点」。他の華やかな建物とは異なり「丹青(彩色)」がない質素な造りです。日本から嫁いだ李方子(り・まさこ)が最期を過ごされたのもここです。

宮殿巡りの満足度の戦略!!

「韓服フリーパス」という最強の特典
韓服を着用していれば五大宮殿と宗廟の入場料(通常3,000〜10,000ウォン程度)がすべて無料になります。

夜間観覧の戦略

  • 景福宮・夜間観覧:期間限定のプレミアム体験
    • 【最大の関門】:例年、4月〜6月の春シーズンに開催されることが多く、「夜間観覧専用」のチケットが必要。インターネットでの事前予約が基本ですが、数分で完売するほど競争率が高いです。外国人向けに当日券が少量(先着順)用意されることもありますが、販売開始前から並ぶ必要があります。
    • 【最強の「招待コード」= 韓服】: 「韓服(ハンボク)を着用している人」は予約なし・無料で入場できます。
    • 【見どころ】夜間観覧のハイライトは、なんといっても水面に浮か「慶会楼(キョンフェル)」です。
  • 昌慶宮:常時稼働の「ナイトモード」を楽しむ
    • 【ここがポイント!】:予約不要の夜間開場: 景福宮の夜間観覧は期間限定・予約制でハードルが高いですが、昌慶宮は月曜日を除き、常に21時まで空いています。
    • 【攻略のアドバイス】:日没の30分前に入場し、明るい時の景色と、ライトアップが始まる瞬間の両方をキャプチャするのが最も贅沢な楽しみ方です。
  • 徳寿宮:都会のネオンと伝統のオーバーレイ
    • 【攻略のアドバイス】:ここも夜21時まで開いています。周囲の超近代的なビル群の明かりと、古風な中和殿のコントラストは、伝統とモダンのレイヤー構造。

昌徳宮の観覧ルール

  • 一般観覧(建物エリア): 韓服を着ていれば入場料(3,000ウォン)は無料です。
  • 昌徳宮・後苑(フウォン): 韓服を着ていても、別途「後苑観覧料(5,000ウォン)」が必要です。
    • 【事前予約が必須】: 観覧希望日の6日前(午前10時)から公式サイトで予約開始。人気枠は数分で「完売」する、まさにチケット争奪戦です。
      https://ticket.uforus.co.kr/web/main?shopEncode=&lang=ko
    • 【ガイド同行が必須】: 自由に歩くことはできず、指定の時間にガイドさんと一緒に入場するシステムです(所要時間: 約70分〜90分のウォーキングツアー)。
    • 【意外と遠い!】:昌徳宮の入口から後苑の入口まで、徒歩で15分ほどかかります。観覧時間の20分前には宮殿にチェックインしておきましょう。

参考サイト https://royal.khs.go.kr/JPN/main/index.do


今回ご紹介した聖地をGoogleマイマップにまとめました。