ー ウルクの都市革命|比較:良渚(東アジア)・先王朝エジプト(ナイル) ー
紀元前4000–3000年は、各地で公共建築・余剰管理・交通インフラが整い都市化が加速した時期。本節は同一タイムライン上で、良渚(長江下流)=水利と玉儀礼、先王朝エジプト(ナイル)=墓制と統合、さらに車輪/犂の普及を、ウルク(ワルカ)を基準点に比較する。
ウルクの特異点は印章・度量衡・記録を束ねた「越境の制度技術」により、遠隔取引を共通手順で運用できたこと。都市化は「植民」一色ではなく、拠点差を前提にしたネットワーク型として読む。
本論
1)都市指標
| 指標 | ウルク | 良渚 | 先王朝エジプト |
|---|---|---|---|
| 公共建築 | ◯ | ◯ | ◯ |
| 余剰の管理 | ◯ | ◯ | ◯ |
| 記録・印章 | ◯ | △ | △→◯ |
| 水利・交通 | ◯(運河・湿地) | ◯(堤・水路) | ◯(ナイル) |
| 権威の可視化 | ◯ | ◯(玉器) | ◯(墓制) |
| ネットワーク性 | ◯ | △〜◯ | △〜◯ |
※◯=明瞭/△=限定的(出土や可視化の度合いによる)。
2)良渚:水利と玉儀礼(-3300〜-3000に絞る)
長江下流の良渚古城遺址一帯では、堤・水路・城址が組み合わさった大規模な水利・祭祀システムが確認されます。
同:公共土木で中心地を支える点。
異:ウルク(ワルカ)のような印章・原初文字の体系は限定的に見えること(現状の可視化レベル)。
3)先王朝エジプト:墓制と統合(-3500〜-3100)
ナイル上流のヒエラコンポリス(ネケン)やナカダ文化では、墓制の発達と象徴表現の洗練が進み、王権成立直前に記録・印章の可視度が上がります。
同:権威の可視化と公共建築。
異:記録の加速タイミングがウルクより遅く、「ナイル一本軸」での物流が中心。
4)車輪/犂:技術束の波及(-3500〜-3000)
車輪と犂(すき)は前4千年紀後半にユーラシア広域でほぼ同時期に普及。生産と輸送のコストを下げ、都市圏の拡大を促しました。ウルクの特長は、この物理技術に加えて、印章・度量衡・記録という制度技術を組み合わせ、遠隔の取引を「共通のやり方」で運用した点にあります。
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- C 仮説寄り(一次が乏しい/矛盾/作業仮説段階)
- ウルクの「制度技術」優位(印章・記録・度量衡のセット運用):A
- 良渚=水利・儀礼優位/記録可視性は限定:B
- 先王朝エジプト=墓制・統合優位/記録は成立直前に加速:B
