— 出アフリカ|北縁ルートの「カフカス回廊」をG1期の接触帯として検証する —
大コーカサスを挟む峠・低地は、出アフリカ後の北縁ルートにおける接触帯候補である。 本ノートは~6万–4万年前を枠に、峠(ダリエル)・低地(クラ=アラス/コルキス)の通過性、ネアンデルタール終焉レンジとの時間関係、 IUP/EUPの技術資料で検証する。UP資料で検証する。
※地域:主=西アジア、跨域=北コーカサス〜黒海北縁
30秒要点
- 地形の鍵:ダリエル峠(大コーカサス越え)とクラ=アラス低地・コルキス低地が通行の骨組み。
- 接触の時間幅:ネアンデルタール~42–38 kaの終焉レンジと、南縁のIUP/EUP展開が部分重なり。
- 資料の核:北縁側メズマイスカヤ(ネアンデルタール後期)、南縁側オルトヴァレ・クルデ/サツルブリア(UP層)。
- 解釈:単一地点の特定は未到。峠+低地の窓が開いた時期に往還が生じた可能性。
対応マップ
このノートのピンは
#F5A841:レイヤーは03
/04
/05
です
本論
1)回廊フレーム:峠と低地
北から南へ抜けるダリエル峠は大コーカサスの主要越境点。黒海南東のコルキス低地、東岸内陸のクラ=アラス低地は、 東西・南北の動線を受け止める通行域で、気候の揺らぎに応じて通過性が変動したと考えられる。
2)時間関係:ネアンデルタール終焉とUP展開
北コーカサスのメズマイスカヤ洞窟はネアンデルタール後期の拠点として知られ、~40 ka前後に収束。 南コーカサス側ではIUP/EUPに相当する石器群(例:オルトヴァレ・クルデ)や、UP層が連続するサツルブリア洞窟が 地域の到達・定着の様相を補強する。
3)接触帯としての妥当性
カフカスは山地の障壁と低地の窓が近接し、時期限定の通過性が生じやすい。これはレバント回廊と同様に “環境窓”ד再占拠”のフレームで読み解くと適合が良い。ただし交雑そのものの場所を単一点に特定するには、 さらなる年代精度と人骨直接証拠が必要である。
確度(A/B/C)
※このサイトでは、資料の信頼度(A / B / C)を簡単なラベルで示します。
詳しくは 凡例:、資料の信頼度(A / B / C)へ →
- A 公的・一次級で直接確認(一次が複数一致でもA)
- B 複数一次情報からの強い推定(反論や未確定部分あり)
- C 仮説寄り(一次が乏しい/矛盾/作業仮説段階)
- カフカスが“通路”になりうる地形条件:A(地形学的に強固)。
- ~42–38 ka の終焉レンジとUP展開の部分重なり:B(複数一次の整合、地域差あり)。
- 交雑“場所”の単一点特定:C(現状は仮説段階)。
参考資料
- Higham, T. et al. (2014). The timing and spatiotemporal patterning of Neanderthal disappearance. Nature. https://doi.org/10.1038/nature13621
- Jones, E. R. et al. (2015). Upper Palaeolithic genomes reveal deep roots of modern Eurasians(サツルブリア個体DNAを含む). Nature Communications. https://doi.org/10.1038/ncomms9912
- Pinhasi, R. et al. (2010). Satsurblia Cave and the Upper Palaeolithic of Georgia(概説). Quaternary International. https://doi.org/10.1016/j.quaint.2010.02.010
- Hoffecker, J. F. (2009). The spread of modern humans in the Caucasus(総説). Quaternary International. https://doi.org/10.1016/j.quaint.2008.12.016