— 出アフリカ|黒海からドナウ回廊へ――東欧への「受け皿」動線を概略化 —
黒海沿岸からドナウ回廊(鉄門峡谷)を通って中欧盆地へ至る動線は、上部旧石器(とくにオーリニャシアン)の拡散における 「受け皿」として機能した可能性が高い。ここでは沿岸→河川回廊への遷移という環境窓を、地図の概略ルートで提示する。
30秒要点
- 骨組み:黒海縁(ドナウ・デルタ/ドブルジャ)→鉄門峡谷→中流盆地(ウィーン周辺)
- 役割:東方からの到達を受け止め、中欧・西欧への段階拡散を仲介
- 地形:沿岸低地と大河回廊が接続する通過性の高い窓
- 時期:おおむね~45–30 ka(地域差あり)
対応マップ
このノートのピンは
#FEEB4F:レイヤーは03
/05
です
本論
1)受け皿としてのドナウ回廊
ドナウは黒海縁から内陸へ深く切り込む大河回廊で、峡谷(鉄門)を抜けると中流盆地に達する。 沿岸域で受け取った人流・物資・技術が、河谷沿いに拡散しやすい地形セットである。
2)オーリニャシアンとの整合
中欧(とくにスウェービアン・ジュラ)で象徴資料と骨角器が厚みを持つ一方、黒海縁からの取り込み口として ドナウ・デルタ/ドブルジャが想定される。これを受け皿→段階拡散というフレームで見ると、地域間の時間差を無理なく説明できる。
確度(A/B/C)
※このサイトでは、資料の信頼度(A / B / C)を簡単なラベルで示します。
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- A 公的・一次級で直接確認(一次が複数一致でもA)
- B 複数一次情報からの強い推定(反論や未確定部分あり)
- C 仮説寄り(一次が乏しい/矛盾/作業仮説段階)
- 「黒海縁→ドナウ回廊→中欧」の受け皿モデル:B
- 個々の取り込み口(地点特定)と時期の完全整合:C
参考資料
- Higham, T. et al. (2012). Testing models for the beginnings of the Aurignacian at Geissenklösterle. PNAS. doi:10.1073/pnas.1207656110
- Hoffecker, J. F. (2009). The spread of modern humans in Europe(概説). PNAS. doi:10.1073/pnas.0903446106
- Conard, N. J. (2009). A female figurine from Hohle Fels. Nature. doi:10.1038/nature07995