東アジアの上部旧石器化

—出アフリカ|東アジア定着とアメリカ到達(東アジア定着)—

東アジアでは ~45–35ka(約4万5千〜3万5千年前)に、ブレード石器・微細石器や装身具・顔料などが広がり、寒い地域で暮らす力と「文化の厚み」が整いました。中国・天洋洞の古代DNAは、当時の人々が現在の東アジアやアメリカ先住民とつながる系統に属することを示します。

30秒要点

  • 技術の核:長い刃(ブレード)を量産→小型化(微細石器)で道具の携行・交換が容易に。
  • 象徴行動:装身具・顔料の利用が拡大=集団アイデンティティの可視化。
  • 古代DNA:天洋洞(~40ka)は、現代東アジア人やアメリカ先住民の祖先と関係する集団の存在を支持。

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初期表示レイヤー:01, 03, 04, 05, 06 / 版:v20250926

本論

1)何が「上部旧石器化」なの?

「上部旧石器化」とは、石器づくりが“長い刃を作る仕組み(ブレード技術)”に変わり、やがて“小さな石片を組み合わせる(微細石器化)”方向へ進むこと。これにより、道具の規格化・交換・携行がしやすくなり、移動の多い暮らしに合う装備が整いました。

2)東アジアでの広がり(~45–35ka)

モンゴル北部(トルボル周辺)華北の水洞溝(Shuidonggou)〜沿海州では、この時期にブレード系の石器群が現れます。地域ごとに道具の細部は違っても、「刃を量産し、小型の部品を使う」という方向性は共通です。これが寒冷な草原〜森林の境目(ステップ–森林移行帯)での狩猟・採集に適していました。

3)古代DNAが示す“つながり”

北京近郊の天洋洞(~40ka)から得られた古代DNAは、当時の人々が現在の多くの東アジア人や、のちにアメリカ大陸へ広がる集団とつながりがあることを示します。これは「東アジアで土台ができ、その一部が後の拡散に関わる」という見方を後押しします。

4)なぜ重要か

東アジアの上部旧石器化は、「技術の標準化」と「象徴行動の拡大」によって、寒冷域でも安定して暮らす力を高めた段階です。この基盤があったからこそ、氷期の厳しい環境を挟んでも、のちのベーリンジア経由の拡散(沿岸→内陸)につながったと考えられます。

確度(A/B/C)

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  • A 公的・一次級で直接確認(一次が複数一致でもA)
  • B 複数一次情報からの強い推定(反論や未確定部分あり)
  • C 仮説寄り(一次が乏しい/矛盾/作業仮説段階)
  • 上部旧石器化の時期(~45–35ka):A(多数の遺跡の年代・層位が一致)
  • 技術傾向(ブレード化→微細石器化):A(石器組成の広域比較で一貫)
  • 天洋洞DNAと“つながり”の解釈:B(複数研究で整合、ただし地域のサンプル偏りに留意)

参考資料