氷期末の沿岸・河口環境(列島総観)— 内湾・潟湖・河口の資源窓

ー 縄文のはじまり(G4)|最古級の土器(氷期末の沿岸・河口環境) ー

海面上昇直前の列島では、河口・潟湖・内湾が“資源の窓”として機能。魚介や淡水・汽水域の恵みを活かす暮らしに、草創期土器がぴたりと合った。九州西岸の福井洞窟泉福寺洞窟のように、内湾近傍のキャンプと初期土器が併存するケースが象徴的である。

なお沿岸・河口だけでなく、上黒岩岩陰遺跡のように山間谷の河川沿いでも草創の居住層が確認される。内湾・潟湖の“資源窓”と、内陸河川の定住点は相補的に存在したと考えられる。

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本論

1)環境の骨子:内湾・潟湖・河口は「まとまった資源の場」

  • 内湾・潟湖:波が弱く、汽水域の多様な生物が集まりやすい。採集や仕掛け漁が効率的。
  • 河口:淡水・汽水・海水がぶつかる栄養の境界。季節的に魚群が入りやすい。
  • 海進の前夜:海面は上がり始める直前。河口や潟湖が各地に形成・拡大し、資源アクセスが良化。

2)なぜ土器と相性がよいのか:栄養の抽出と保存

土器は水+火を扱える容器。魚介の脂質やゼラチンを煮出し、消化とカロリー効率を高める。貝や水草、堅果のアク抜き・軟化にも有効で、季節差を和らげる保存食づくりにも繋がる。

3)事例の見取り図

九州西岸の福井洞窟泉福寺洞窟の層位は、内湾近傍のキャンプと初期土器の併存を示す代表例。沿岸・河口の資源を日常の煮炊きで利用したと解釈できる。

確度 A/B/C

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  • A 公的・一次級で直接確認(一次が複数一致でもA)
  • B 複数一次情報からの強い推定(反論や未確定部分あり)
  • C 仮説寄り(一次が乏しい/矛盾/作業仮説段階)
  • A:氷期末に内湾・潟湖・河口が拡がり、資源豊富だったこと(地形・堆積・生態の一次情報)。
  • B:初期土器が沿岸・河口近傍のキャンプに伴うこと(複数遺跡の整合)。
  • C:各地域での資源利用の比重(魚種・季節利用の細部)は遺跡差が大きく、慎重評価。

参考資料

  1. Kobayashi, T. (2004). Jomon Reflections. Oxbow Books (Open Access).
  2. Lucquin, A. et al. (2016). Ancient lipids document continuity… PNAS.