港では何が交換された?(鉄・塩・玉の“セット”)

ー 【特集】鉄と水田の拡大、クニの萌芽 ー

港では、鉄×塩×玉(ガラス玉・石玉)のような「セット」での交換が動きました。重い鉄と保存の効く塩、価値密度の高い装身具(玉)は、運びやすさ・保存性・需要の広さの点で組み合わせやすく、受け口→内海→河口三角州をリレーする分配に向いていました。

鉄とガラス玉は半島由来が主流、塩と石・翡翠の玉は国内起源が主流――ただし、列島内の流通は共通の幹線で動く。共通幹線は、「鉄はどこから来てどう使われた?」参照

塩は「内海のなか」でよく動く

塩は主に瀬戸内沿岸で生産されるため、内海の短距離分配が中心。 地図「内海・港セット回廊(若狭→播磨→大阪湾東縁)」では、 播磨灘(港セット交換帯)や瀬戸内中央部(備後沿岸・潮待ち場)で いったん集めて配り直す流れが目立ちます。

生産が確認できる代表例

  • 上東遺跡は弥生後期の製塩炉が確認される代表例。
  • 小島東遺跡は石敷き製塩炉と大量の製塩土器が報告。
  • 尾崎海岸遺跡は土器溜り+製塩炉などの記録。

玉(ガラス小玉・管玉+石玉)は“跳び”が利く

軽く価値密度が高いので、北部九州連絡(博多湾域→瀬戸内中央)のような 補完ルートから内海へ入り、一部は長めの区間を飛び越えて拡散しやすい傾向。 (鉄は重く再集積点に寄りがち)

モノの性格の違い(扱い方が変わる)

  • 鉄:重い/腐食リスク→刻み多め&再集積重視。供給は半島起点。
  • 塩:沿岸で生産(瀬戸内が強い)→内海内の短距離分配が中心。
  • 玉:小型で価値密度が高い→長距離移動しやすい。
    ※「玉」にはガラス小玉・管玉に加え、瑪瑙・碧玉・翡翠(糸魚川産を含む)などの石玉が入る。

考古学の“窓口”も違う

  • 塩:沿岸の製塩遺構(製塩に伴う遺物・施設)が手がかり。
  • 玉:ガラス小玉・管玉のまとまった出土や装身具の分布が指標。
  • 鉄:鉄滓・鍛冶炉跡など、再加工の痕跡で追える。

まとめ(鉄との違い)

同じ受け口→内海の節点→河口三角州という共通幹線を使いつつ、
重い鉄は小刻みに寄港して集め直し、塩は内海の近距離で回し、軽い玉はときどき長い距離を一気に飛ぶ――品物の性格で、同じ幹線でも動き方が変わる。

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  • C 仮説寄り(一次が乏しい/矛盾/作業仮説段階)
  • A:製塩・鍛冶・装身具出土という活動の存在。
  • B:「港セット」が内海の節点で再集積・分配される合理性。
  • C:各港ごとの具体的な品目組合せ・量、寄泊地の地点特定。