ー 【特集】モンスーンが動かした香辛料ルート:インド洋ネットワーク ー
西暦300–500年において、マンタイ(セイロン北西)とアドゥリス(紅海沿岸)は、ともに中継・積替・保管の機能を担ったことが、遺構・出土・年代整合で堅く支持できる。軽く高価な貨物(香辛料・ガラスビーズ・貨幣・輸入陶器など)は、静穏域での仮置き/再積載と、関門での課税・護送を組み合わせて運ばれた——単一港の恒常的独占までは言えないが、「年一往復(季節風)」に同期する中継ネットワークは十分に描ける。
何がどこまで言えるか
- マンタイ=静穏域(内海)×積替・保管、アドゥリス=受け皿港×課税・再配分という役割分担は確認可能。
- 貨物セット(香辛料・ビーズ・輸入陶器・貨幣)と建築・倉庫痕跡から、中継港の機能が具体化。
- 季節風の夏=西航/冬=東航運用と、越冬・船団化の実務は、両地域の“時間の窓”を説明。
地形と配置(なぜ中継になるのか)
マンタイ:内海で“積み替えやすい”
外洋のうねりが弱まるマンナール湾は、仮置き・再積載に適した静穏域。大型船と小型舟運の役割分担が取りやすい。
アドゥリス:紅海の“受け皿”と関門の近接
紅海南口(バブ・エル・マンデブ)に近い外港として、倉庫・課税・再配分が集中。紅海内航から外洋へ抜ける関門の受け皿を担った。
出土と年代(何でわかるのか)
物質文化のセット性
両地ともに、輸入陶器・ガラスビーズ・貨幣・計量痕跡などがまとまって見つかる。これは中継・保管・再積載が継続的に行われたことを示す指紋である。
年代整合:4–5世紀を含む重なり
層位・型式・通用貨幣の手掛かりは、両地で4–5世紀レンジの活発な接続を示す。
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確度(A/B/C)
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- A 公的・一次級で直接確認(一次が複数一致でもA)
- B 複数一次情報からの強い推定(反論や未確定部分あり)
- C 仮説寄り(一次が乏しい/矛盾/作業仮説段階)
- A:マンタイとアドゥリスが中継・保管・再配分の拠点であったこと(遺構・出土群・年代で一次級に強固)。
- B:季節風に同期する積替→出帆窓→越冬・船団の運用像(地形・海況・他港の比較で整合)。
- C:単一路線・単一港の恒常独占という像(時期差/政変/海況変動で可変)。
