シナモンはどこで積み替えた?(セイロンの中継)

ー 【特集】モンスーンが動かした香辛料ルート:インド洋ネットワーク ー

西暦300–500年のシナモンの主要な積み替え拠点はセイロン島北西のマンナール湾沿岸で、なかでもマンタイ遺跡を中心とする港市群が「静穏域(内海)」×「季節風サイクル」を活かして東西航路を結節した、とまでが堅い結論です。香辛料(シナモンのほか胡椒等)と軽貨は、出帆窓・越冬・積替の運用で一括移送されました(厳密な独占像は避けるのが安全)。

地形と静穏域(なぜセイロン北西か)

マンナール湾の「内海」条件

マンナール湾は外洋のうねりが緩和され、積替・仮置きに適した静穏域です。さらに湾外の外海に対して適度な水深と緩衝があり、大型船と小型舟運の役割分担が取りやすい立地でした。

内陸との接続(王都圏への背後地)

セイロンの主要内陸拠点(王都圏)と湾岸は古い水系・陸路で結ばれ、内陸の需要・供給を外洋の流れへ繋ぐ“背後地”を形成。これが中継港の維持条件になりました。

物流の実際(何をどう積み替えたか)

軽貨と高付加価値品の「一括移送」

香辛料(シナモン、胡椒)やビーズ・硝子・陶器などの軽くて価値が高い貨物は、マンナール湾での積替・仮置きを経て船型・針路を切替。「マンタイ遺跡(セイロン中継港)」の出土群は、こうした機能を裏づけます。

マンタイでは香辛料(胡椒・丁子)や穀類の微遺存、ガラス・ビーズ・陶器・コインなどの出土が報告され、中継港=積替拠点の像を支持します。4–5世紀を含む広い年代レンジで、東西の物資・文化要素が同所で重なる。

季節風サイクルに合わせた往復運用

夏の南西季節風期にインド西岸から西行(外洋へ)、冬の北東季節風期に東行(復路)が基本。復路では越冬・待機・船団化でリスクを調整しました。

対応マップ

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確度(A/B/C)

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  • A 公的・一次級で直接確認(一次が複数一致でもA)
  • B 複数一次情報からの強い推定(反論や未確定部分あり)
  • C 仮説寄り(一次が乏しい/矛盾/作業仮説段階)
  • A:マンタイ周辺が中継・積替拠点として機能した事実(考古学的出土と学術報告で一次級に強固)。
  • B:本期(300–500年)にマンナール湾=静穏域が季節風航海の復路運用(越冬・待機・再積載)で重視されたこと(地形条件・航海ロジックの整合)。
  • C:「シナモンの流通が常に単一路線・単一港で独占的に扱われた」とする断定(時期・荷姿・政体変動で分散の可能性がある)。