ー 【特集】鉄と水田の拡大、クニの萌芽 ー
弥生後期(G9)になると、環濠集落は「守りの堀」一本から、区画・通路・広場を組み合わせた“計画空間”へと比重が移ります。
堀の役割は防御だけでなく、境界の可視化・動線整理・儀礼の場の切り取りを担い、大型建物や倉庫群の配置がめだちます(=首長層・共同管理の可視化)。
何が変わった?
① 防御一辺倒 → 区画・交通・見せる境界
- 堀は連続一線だけでなく、分節(区画)や出入口(橋・門)を伴い、内部の“道”が整理される。
- 広場(空地)が強調され、祭祀や集会の場として使われる痕跡。
② 住まいの密集 → 倉庫・大型建物の前景化
- 高床倉庫の群や、柱間の大きい大型建物が現れ、再配分・管理の機能が前に出る。
- 住居は周縁へ薄く分散、中心域は収穫・儀礼・統治の場へ。
③ 立地は“高台偏重” → 微高地〜低地の使い分け
- 稲作拡大とともに、用排水と動線を考えた微高地の拠点化が進む。
- 洪水時の逃げ場と平時の物流の両立(内海回廊・河口三角州への接続)。
代表例
「吉野ヶ里遺跡(環濠・柵)」「池上・曽根遺跡(環濠・大型建物)」「唐古・鍵遺跡(環濠・区画)」「三雲・井原遺跡(環濠・首長墓域に隣接)」「朝日遺跡(環濠・愛知)」
G9中心の比較では、近畿(池上・曽根/唐古・鍵)で区画・広場・倉庫群の前景化が見え、北部九州(吉野ヶ里/三雲・井原)は長期継続・権威表示の一体化が特徴です。
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- A 公的・一次級で直接確認(一次が複数一致でもA)
- B 複数一次情報からの強い推定(反論や未確定部分あり)
- C 仮説寄り(一次が乏しい/矛盾/作業仮説段階)
- A:環濠・柵列・大型建物・倉庫群の存在(発掘で確認)。
- B:堀の区画化・動線整理、広場・倉庫群の前景化という空間設計の傾向。
- C:個々の集落での機能解釈の違い(軍事・儀礼・行政の比重配分)。
