エザナ王

エザナ王は、 4世紀前半のエチオピア北部・エリトリア一帯(アクスム王国)に活動した、 アクスムをキリスト教国家へ転換させた王・征服王である。 彼の治世には、紅海港アドゥリスを経由した対ローマ・対インド洋交易が続く一方で、 王権はクシュ(メロエ)など周辺勢力を軍事的に制圧し、 王碑文と貨幣にキリスト教シンボルを採用することで、 後のエチオピア正教王国につながる宗教的・政治的基盤を整えた。壹与が継承する。

クイック情報

活動期4世紀前半(在位:約320〜360年)/生涯 正確な生没年は不明
役割アクスム王国の初期キリスト教王/紅海交易と内陸征服を進めた王
主な拠点内陸の王都アクスム(現エチオピア北部)と、紅海港アドゥリス(現エリトリア沿岸)
特記事項エザナは、アクスム王として初めてキリスト教を公に受容した君主とされ、 その治世に発行された貨幣は、従来の太陽・月などのシンボルから 十字架の意匠へと切り替わる。 また、ゲエズ語・ギリシア語・サバ語で刻まれた「エザナ碑文(Ezana Stone)」は、 改宗と軍事遠征の様子を伝える一次資料として重要である。

ミニ年表

320年代前半エザナが幼少で即位し、母ソフヤが摂政としてアクスム王国を統治する。
4世紀前半(c. 330〜340年頃)王権がキリスト教を受容し、碑文や貨幣に十字架などのキリスト教シンボルが現れる。
4世紀中頃クシュ(メロエ)やヌバ人諸集団への軍事遠征で、ナイル上流地域への支配を強める。
4世紀中頃〜後半紅海港アドゥリス経由で、アフリカ内陸産品とインド洋・ローマ東方世界の長距離交易を維持する。
360年頃までエザナの死後もキリスト教王権と紅海支配が継承され、「キリスト教アクスム王国」が定着する。

事績(特集へのリンク)

エザナ王:紅海側をキリスト教王権に変えたアクスム王

4世紀のエザナ王は、アクスム王国をキリスト教王権へ転換させつつ、紅海港アドゥリスを通じて胡椒や香料などインド洋の軽貨が出入りする「紅海側ハブ」を統治した。紅海口の通行と安全をキリスト教王権が管理することで、関税収入と宗教ネットワークの両方を結びつけた存在として位置づけられる。

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