上部旧石器とは?|旧石器の区分と欧州の代表文化

「上部旧石器」は旧石器の最終段階で、細長い刃(ブレード)や微細石器、装身具・洞窟壁画の広がりが特徴。世界共通の「時代名」だけでなく、地域ごとの文化名(例:ヨーロッパのオーリニャック)が並行して使われます。

30秒要点

  • 区分の大枠:旧石器は「下・中・上」。上部旧石器(~45–10ka)は現生人類の拡散と重なる
  • 技術の核:ブレードと微細石器=規格化された部品づくりが進む。装身具・顔料・壁画など象徴行動が目立つ。
  • 欧州の代表名:オーリニャック → グラヴェット → ソルートレ → マグダレン…の地域的な「文化名」が使われる。

旧石器の「下・中・上」って?

考古学では道具の作り方や暮らし方の変化で旧石器を3つに分けます。

下=前期旧石器(Lower)剥片やハンドアックス中心。人類の初期拡散。
中=中期旧石器(Middle)ムスティエなど(欧州)。ネアンデルタール人が主役だった地域も。
上=後期旧石器(Upper)ブレード量産・微細石器・装身具・壁画が広がる。現生人類が各地に定着。

※「上部旧石器」は世界で同じ時代ではあるものの、地域ごとに進み方や呼び名は異なります。

上部旧石器のキーワード(世界共通の特徴)

  • ブレード技術:核石から細長い刃を量産&標準化。携行・交換に向く。
  • 微細石器:小さな部品を柄に装着して複合道具化。
  • 象徴行動:装身具・顔料・洞窟壁画(例:フランス)など、記号・美術の発達。

※ブレード=部品の標準化→携行や交換が楽に、装身具や壁画=集団の記号化・伝達と捉えると理解が進みます。

ヨーロッパでは:代表的な「文化名」と目安年代

欧州の上部旧石器は、いくつかの文化名で呼ばれます(年代は地域で幅が出ます)。

初期段階(IUP/EUP)~45–40kaごろ。初期のブレード系。現生人類の痕跡が増える。
オーリニャック(Aurignacian)~43–33ka。骨角器・装身具・初期の美術。
グラヴェット(Gravettian)~33–23ka。薄いブレードレット、ヴィーナス像で有名。
ソルートレ(Solutrean, 主にイベリア)~22–17ka。薄い葉状尖頭器など高度な圧痕技術。
マグダレン(Magdalenian)~17–12ka。洞窟芸術の最盛、骨角器が豊富。

※この並びは「欧州の中での話」です。東アジアやアメリカには別の呼び方・系列があり、直接は対応しません。

誤解しやすい点

  • 「上部旧石器」は世界共通の時代の名前。「オーリニャック」「グラヴェット」は欧州の文化の名前。混同しない。
  • 「革命」かどうか:急変ではなく地域ごとの速度差あり。欧州の用語を他地域へそのまま当てない。
  • 文化名=人種名ではない:道具の作り方や様式の名前であって、人の“血筋”を直接示す語ではない。