— 出アフリカ|北ルートの要「レバント回廊」をG1期(IUP/EUP)で読み解く—
ナイル〜シナイを経てカルメル沿岸・レバノンへ抜けるレバント回廊はG1期にIUP/EUPが重なる接触帯。ブレード/ブレードレット体系と再占拠のリズムから、通過性と定着の手がかりを俯瞰する(~6万–4万年前)。
30秒要点
- 地形の骨:シナイ陸橋→カルメル沿岸→レバノン山地縁(ベッカ谷)が回廊を形成。
- IUP→EUP:ブレード→ブレードレット量産と装身具などの象徴資料が増加。
- 交替と重層:ネアンデルタールと現生人の交替・重層が地域差を伴って展開。
- 時間幅:~60–50 ka の交雑主窓と、~45–38 ka のEUP展開が部分的に重なる。
対応マップ
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#C2315C:レイヤーは04
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本論
1)回廊の地理フレーム
シナイ北縁(陸橋域)からカルメル沿岸回廊を経て、ベッカ谷(レバノン山地とアンチレバノンの間)へ抜ける 低地・山地縁が人の移動を誘導した。気候の揺らぎで環境窓が開く期には通過性が高まる。
2)IUP/EUPの技術指標
IUP/EUP の核は、ブレード/ブレードレットの量産(剥片の規格化)と、装身具・顔料などの象徴資料の厚み。 クサール・アキル(レバント)は層序と技術変化が精査された基準遺跡で、ブレードレットの小型化系統を示す。 一方、ボケル・タフティト(ネゲブ)はレバント IUP(エミリアン系)の基準地点として規格的ブレードの出現を示し、 年代再評価(約 50–47 ka)によって IUP の時間幅の把握が進んだ。
3)交替・再占拠のリズム
レバントは交替・重層居住が起きやすい接触帯。ネアンデルタールと現生人の時間的重なりが見られ、 再占拠(短期〜中期の離着陸)を重ねつつネットワークが広がったと解釈できる。 イスラエルのマーノット洞窟(Manot 1)はUP初期の人骨と文化要素を伴い、交替期の具体像を補強する。
確度(A/B/C)
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- A 公的・一次級で直接確認(一次が複数一致でもA)
- B 複数一次情報からの強い推定(反論や未確定部分あり)
- C 仮説寄り(一次が乏しい/矛盾/作業仮説段階)
- 回廊(シナイ→カルメル→レバノン縁)の通過性:B(複数一次の整合、時期差あり)。
- IUP/EUPの量産体系と象徴資料の厚み:A(多点の一次級観察で強固)。
- 交替・再占拠がネットワーク拡大に寄与:B(補完的推定、地域差を含む)。
参考資料
- Hershkovitz I. et al. 2015. Levantine cranium from Manot Cave (Israel). Nature
- Boaretto E. et al. 2021. The absolute chronology of Boker Tachtit (Israel). PNAS
- Douka K. et al. 2013. Chronology of Ksar Akil (Lebanon). PLOS ONE(PMCID)
- Bosch M.D. et al. 2015. New chronology for Ksâr ‘Akil (Lebanon). PNAS