レバント回廊|G1期のIUP/EUPと交替・再占拠

— 出アフリカ|北ルートの要「レバント回廊」をG1期(IUP/EUP)で読み解く—

ナイル〜シナイを経てカルメル沿岸・レバノンへ抜けるレバント回廊はG1期にIUP/EUPが重なる接触帯。ブレード/ブレードレット体系と再占拠のリズムから、通過性と定着の手がかりを俯瞰する(~6万–4万年前)。

30秒要点

  • 地形の骨:シナイ陸橋→カルメル沿岸→レバノン山地縁(ベッカ谷)が回廊を形成。
  • IUP→EUP:ブレード→ブレードレット量産と装身具などの象徴資料が増加。
  • 交替と重層:ネアンデルタールと現生人の交替・重層が地域差を伴って展開。
  • 時間幅:~60–50 ka の交雑主窓と、~45–38 ka のEUP展開が部分的に重なる。

対応マップ

このノートのピンは #C2315C:レイヤーは04/05です

初期表示レイヤー:01, 03, 04, 05, 06 / 版:v20250926

本論

1)回廊の地理フレーム

シナイ北縁(陸橋域)からカルメル沿岸回廊を経て、ベッカ谷(レバノン山地とアンチレバノンの間)へ抜ける 低地・山地縁が人の移動を誘導した。気候の揺らぎで環境窓が開く期には通過性が高まる。

2)IUP/EUPの技術指標

IUP/EUP の核は、ブレード/ブレードレットの量産(剥片の規格化)と、装身具・顔料などの象徴資料の厚み。 クサール・アキル(レバント)は層序と技術変化が精査された基準遺跡で、ブレードレットの小型化系統を示す。 一方、ボケル・タフティト(ネゲブ)はレバント IUP(エミリアン系)の基準地点として規格的ブレードの出現を示し、 年代再評価(約 50–47 ka)によって IUP の時間幅の把握が進んだ。

3)交替・再占拠のリズム

レバントは交替・重層居住が起きやすい接触帯。ネアンデルタールと現生人の時間的重なりが見られ、 再占拠(短期〜中期の離着陸)を重ねつつネットワークが広がったと解釈できる。 イスラエルのマーノット洞窟(Manot 1)はUP初期の人骨と文化要素を伴い、交替期の具体像を補強する。

確度(A/B/C)

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  • A 公的・一次級で直接確認(一次が複数一致でもA)
  • B 複数一次情報からの強い推定(反論や未確定部分あり)
  • C 仮説寄り(一次が乏しい/矛盾/作業仮説段階)
  • 回廊(シナイ→カルメル→レバノン縁)の通過性:B(複数一次の整合、時期差あり)。
  • IUP/EUPの量産体系と象徴資料の厚み:A(多点の一次級観察で強固)。
  • 交替・再占拠がネットワーク拡大に寄与:B(補完的推定、地域差を含む)。

参考資料

  1. Hershkovitz I. et al. 2015. Levantine cranium from Manot Cave (Israel). Nature
  2. Boaretto E. et al. 2021. The absolute chronology of Boker Tachtit (Israel). PNAS
  3. Douka K. et al. 2013. Chronology of Ksar Akil (Lebanon). PLOS ONEPMCID
  4. Bosch M.D. et al. 2015. New chronology for Ksâr ‘Akil (Lebanon). PNAS