ー 【特集】モンスーンが動かした香辛料ルート:インド洋ネットワーク ー
西暦300–500年、インド洋の海運は夏=南西季節風で西航/冬=北東季節風で東航という「年一往復」の時間割を前提に利益化された。具体的には、①出帆窓の厳選、②越冬・待機地の活用、③船団運用と保険、④関税・倉庫・護送の制度連携で、胡椒・シナモンなど軽く高価な貨物を一括移送し、運賃とリスクを最小化した。
基本の時間割(夏=西航/冬=東航)
西航:南西季節風(6〜9月)を掴む
インド西岸(マラバール)からアラビア海〜アデン湾へは南西季節風に乗るのが定石。
東航:北東季節風(12〜2月)で復路
復路は北東季節風期にアデン湾〜紅海口から東へ。季節の切替期にはソコトラ島沖などで越冬・待機して風待ちをする。
利益化のメカニズム(どう儲けに変えたか)
運賃・日数の圧縮:出帆窓と中継の最適化
風向・波高が良い出帆窓だけで長距離を進み、静穏域の中継(例:マンナール湾)で再積載・仮置きを行うことで、航走時間と待機損を抑える。
リスク低減:船団・保険・護送
高価値の軽貨は船団化で海難・海賊リスクを分散。港市では倉庫・関税・護送がパッケージで提供され、安全通行の代償として関税や寄港料が徴収される。アデン湾中継(アデン沖)
価格戦略:裁定と回転率
西岸(胡椒)と島嶼(シナモン)など供給地の季節差・地域差を利用し、港間の裁定(安い港で買って、高い港で売って、値段の差で稼ぐ)と年一往復の回転率で利益を積む。
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- C 仮説寄り(一次が乏しい/矛盾/作業仮説段階)
- A:夏=西航/冬=東航という季節風同期の年一往復が基本運用であったこと(地形・気象・史料の一次級整合)。
- B:越冬・待機・船団化・関税・護送が利益化の主要手段だったこと(複数地域・複数一次情報の整合)。
- C:特定の港や政権による恒常的独占(時期差・政治変動で比重は変わり得る)。
