—出アフリカ|東アジア定着とアメリカ到達(内陸コリドーの地形窓)—
華北の黄土高原から遼河平原、さらに沿海州へは、平原と河谷が連なる「内陸コリドー」が伸びています。~45–35ka(G1)の人びとは、この“通り道”と、草原と森林の境目(移行帯)の資源を活かして広がったと考えられます。
30秒要点
- 地形の枠組み:黄土高原(台地)—遼河平原(広い低地)—沿海州(河川網)を河谷と平原がつなぐ。
- 環境の窓:MIS3〜2の気候下で、ステップ—森林の移行帯が広く、狩猟・採集の資源が豊富。
- 考古の示唆:水洞溝(Shuidonggou)などにブレード系が現れ、規格化された道具が移動を後押し。
対応マップ
このノートのピンは
#16589B:レイヤーは03
/04
です
本論
1)「内陸コリドー」とは何か
高い山を越えるのではなく、河谷と平原を選んでつないだ「通り道」です。長い距離でも、台地(黄土高原)—平原(遼河)—河川網(沿海州)を段差の少ないルートで継げるのが特徴です。
2)地形と環境:移行帯(エコトーン)の利点
移行帯は、草原の獣と森林の植物・小動物の両方が得られる“豊かな帯”です。氷期でも完全な砂漠や深い森林ばかりではなく、MIS3(~57–29ka)には比較的温和な時期もあり、移動と定着の両立に向きました。
3)代表例:水洞溝(Shuidonggou, 寧夏)と遼河平原
水洞溝は、北中国の上部旧石器研究の要所です。ブレード系の石器や装身具が見つかり、規格化された道具と象徴行動が見られます。東へ進むと遼河平原に広い低地が開け、さらに北東の沿海州(ウスリー川流域)へ通じます。
4)このノートの位置づけ
本ノートは、道の“地形窓”を説明する地域ノートです。ルートの詳細は扱わず、どこが通りやすかったのかを地図で確認するための最小限の枠組みを示します。
確度(A/B/C)
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- A 公的・一次級で直接確認(一次が複数一致でもA)
- B 複数一次情報からの強い推定(反論や未確定部分あり)
- C 仮説寄り(一次が乏しい/矛盾/作業仮説段階)
- 水洞溝におけるブレード系の出現:A(複数地点・年代が整合)
- 華北〜遼河〜沿海州の「通り道」仮説:B(地形・古環境と整合、直接証拠は間接的)
- MIS3における移行帯の広がり:B(古環境データ多数、地域差に幅)
参考資料
- Peng et al. 2020. Chronological model for Shuidonggou Locality 2(PLOS ONE)
- Zwyns et al. 2019. Early Upper Paleolithic in Mongolia(Sci. Reports)
- Li et al. 2019. Late Pleistocene environments & dispersal routes(PLOS ONE)
- Li et al. 2013. Upper Palaeolithic China: new results from Shuidonggou(Antiquity)