ー 【特集】モンスーンが動かした香辛料ルート:インド洋ネットワーク ー
西暦300–500年の胡椒の主要産地はマラバール(現ケーララ)沿岸で、西ガート山脈の多雨が生育を支え、港市網からアラビア海へ出帆する体制が続いていた。特定の単一港による恒常的独占は断定しないのが安全で、季節風と海況に応じて出帆窓・越冬・積替を組み合わせた“分業”で輸出されたとみるのが妥当である。
地形と生産帯(なぜマラバールか)
西ガートの風雨と胡椒栽培
背後の西ガート山脈が季節風を受けて多雨帯を形成し、樹木に巻き付くつる性の胡椒に適した環境を作る。沿岸~山麓にかけての集荷が港市網に接続する。
港市網と出帆窓(どこから出荷したか)
外洋と内海の分担
外洋へ出る前段で内海側の静穏域(例:マンナール湾)での積替・仮置きをはさみ、外海の出帆窓(風向・波高が有利な時期)に外洋船が東西へ動く。
港の比重は時期で変動
古くからの港(例:ムジリス、ティンディス等)は自然環境・水系変動・政治で比重が変わり得る。300–500年も“マラバール一帯の港市網”としての連続性に注目し、特定港の固定的独占像は避けるのが妥当である。
航路運用(季節風と越冬)
夏=西航/冬=東航の年一往復
夏の南西季節風で西航し、冬の北東季節風で東航するのが基本。復路では越冬・待機・船団化でリスクを調整した。
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- B 複数一次情報からの強い推定(反論や未確定部分あり)
- C 仮説寄り(一次が乏しい/矛盾/作業仮説段階)
- A:胡椒(Piper nigrum)がマラバール原産であること(植物学・地誌の整合)。
- B:本期(300–500年)にマラバール産の胡椒輸出が継続し、季節風に同期した出帆窓・積替が実務化していたこと(地形・気象・他地域の受け皿と整合)。
- C:特定の単一港が恒常的に独占したとする断定(自然・政治・水理変動により港の比重は変動)。
