前-クロヴィス層の検証(年代と層位)

—出アフリカ|東アジア定着とアメリカ到達(前-クロヴィス層の検証)—

「前‐クロヴィス(Pre‐Clovis)」とは、北米のクロヴィス文化(~13.05–12.75ka)より古い活動を示す証拠です。判定は、年代層位がしっかり結びついているかが勝負。古い日付だけや石器らしい形だけでは不十分で、同じ層の中で道具・燃焼痕・食料残滓などがきれいに揃うことが重要です。

クロヴィス期って何?

「クロヴィス期」は北米広域で見られる溝付き槍先の文化(13,050–12,750 cal BP)で、IFCの可用化期と重なるため内陸移動を説明しやすいが、~14.5kaのモンテ・ヴェルデなど前‐クロヴィスがあるため「最初の到達」ではない。

30秒要点

  • 年代の核:較正済みの放射性炭素年代(cal BP)を基本に、複数サンプル+ベイズ統合で幅を評価。
  • 層位の核:道具・炭・骨・植物が同じ層で未攪乱か。後混入や再堆積を除外。
  • 代表例:モンテ・ヴェルデ(海藻利用 ~14.5ka)/ページ=ラッドソン(フロリダ ~14.55ka)/クーパーズ・フェリー(アイダホ ~16–15.3ka)/マニス・マストドン(~13.8ka)。
  • 注意点:沿岸は海没で欠測、洞窟は混入に注意。証拠のセットで判断。

対応マップ

このノートのピンは #3D97A7:レイヤーは05です

初期表示レイヤー:01, 03, 04, 05 / 版:v20250928

本論

1)何をもって「前‐クロヴィス」と言う?

基準はシンプルで「クロヴィスより古いこと」ですが、実務は次の二本柱です。

  • 年代:炭化物・骨・殻などを放射性炭素で測り、較正(cal BP)して比較。単発日付ではなく、上下の層も含めた連続性で確かめる。
  • 層位:道具・燃焼痕・食料残滓が同じ層で出るか。後から落ちた糞石や根、動物穴による混入を除外。

2)代表ケース(~16–12kaの“セット”)

  • モンテ・ヴェルデ(チリ)~14.5ka:海藻利用の直接証拠と居住痕が同じ文脈でまとまる南米の基準例。沿岸適応の早さを示す。
  • ページ=ラッドソン(フロリダ)~14.55ka:池畔でのマストドン処理と石器・炭の層位一貫が確認され、前‐クロヴィスを支持。
  • クーパーズ・フェリー(アイダホ)~16–15.3ka:初期段階の石器群と炉跡が反復占拠で示され、内陸の早期活動の有力例。
  • マニス・マストドン(ワシントン州)~13.8ka:マストドン肋骨に骨製投射点が刺入。動物相手の道具使用を直接示す。

確度(A/B/C)

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  • A 公的・一次級で直接確認(一次が複数一致でもA)
  • B 複数一次情報からの強い推定(反論や未確定部分あり)
  • C 仮説寄り(一次が乏しい/矛盾/作業仮説段階)
  • ~16–14.5kaの前‐クロヴィス活動の存在:B(複数一次研究が整合)。
  • 判定条件=年代×層位のセット重視:A(考古学の基本手続きとして確立)。
  • 広域タイムライン(沿岸先行→内陸後続):B(退氷・旧汀線の復元と整合)。

参考資料