ー 【特集】朝鮮半島:三韓と郡県、鉄と海のネットワーク ー
兄山江の幹支流は、慶州盆地(斯盧)と浦項・蔚山の港域をむすぶ受け渡し回廊を形成した。G10(1–3世紀)には、慶州周辺で墓域・城郭・副葬が厚みを増し、小国連合の核が見える。史料上は斯盧=辰韓の一国と把握され、名称の「新羅」はのちに整う。
地理の核:慶州盆地と兄山江(水系の“背骨”)
慶州(新羅中核・代表点)を中心とする盆地は、南の蔚山、北東の浦項へ開いた兄山江(Hyeongsan River)流域に位置。内陸の政治拠点⇄沿岸の港域を結ぶ自然の回廊が、人口・物資・情報の集中を促しました。
斯盧(Saro)という“芯”:辰韓の一国→王権の母体へ
斯盧(Saro)は辰韓を構成する小国のひとつ(サムハン期)。慶州一帯の6部族が連合して核をつくり、のちに制度整備とともに「新羅」へ名称を統一していきます(正式な「新羅」号は6世紀の整備)。本稿の時期(1–3世紀)は盆地核の自立化と周辺編入が進む過程と見てよい段階です。
ネットワークの型:内陸コア→沿岸→対外交渉の“土台”
兄山江が保証する内陸—沿岸の接続により、鉄器・土器様式・副葬品といった物的指標がコアに集まり、支配層墓・城郭の発達がみられます(例:月城周辺の調査など)。この“コア→沿岸”の型は、のちの新羅成長期にも継承される都市―港湾連関の原型です。
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- C 仮説寄り(一次が乏しい/矛盾/作業仮説段階)
- A:斯盧=辰韓の一国/新羅の前身(『三国史記』系伝承と通説、基礎地名・年表整合)。
- B:核の位置=慶州盆地/兄山江流域(地理・考古の重ね合わせ、沿岸との自然回廊)。
- B:1–3世紀にかけた核の自立化と周辺編入(対外史料との時期整合・考古指標の集積)。
- C:細部年次(具体的支配圏の拡大順序・各集落の統合プロセス)—資料ギャップが大きく、地域ごとの差も残る。
