—出アフリカ|南ルートとサフル到達(サフル到達時期の前倒し)—
豪・北部アーネムランドの砂岩ロックシェルター、マジェドベベ(旧称Malakunanja II)。2012・2015年の再発掘により、人類の占拠が約6.5万年前まで遡る可能性が示され、サフル到達の時間軸を前倒しにした要証拠として広く議論されています。植物利用・顔料・磨製石器などの行動証拠も豊富です。
30秒要点
- 年代:OSLなどによる評価で約6.5万年前が提案(少なくとも5万年前は確実)。
- 行動:磨製石器・顔料・多様な植物食の利用(炭化種実ほか)。
- 意義:サフル到達の下限を押し上げ、南ルート像の現実味を補強。方法論・保存状態を巡る批判も併存。
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本論:何が分かっているか
1)年代と層位
2017年のNature論文は、アーチファクト群の層位的連続性とOSL年代測定により、最下部の密集帯で約65±6千年前の占拠可能性を提示しました。これにより「人類のサフル到達は従来の5万年前前後より早い」との見取り図が強化されました。
2)行動と生業
炭化植物遺体(種実・塊茎・パンダナス等)の分析から、初期段階から加工を要する植物資源が利用されていたことが示唆されます。さらに長期にわたる挽き臼・磨製石器の使用記録は、技術的柔軟性と象徴行動(顔料使用)を伴う適応を示します。
3)研究体制と地域文脈
調査は伝統的土地所有者ミラル(Mirarr)を代表するGundjeihmi Aboriginal Corporationと協働で進められ、発掘・公表プロセスの合意形成が重視されました。遺跡はカカドゥ国立公園域(旧Jabiluka鉱区)に位置します。
確度(A/B/C)
※このサイトでは、資料の信頼度(A / B / C)を簡単なラベルで示します。
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- A 公的・一次級で直接確認(一次が複数一致でもA)
- B 複数一次情報からの強い推定(反論や未確定部分あり)
- C 仮説寄り(一次が乏しい/矛盾/作業仮説段階)
- 「マジェドベベに5万年前以前の占拠がある」ことはA〜Bで堅い。
- 「65 ka級の初期占拠」の細部年代値はB〜C(推定幅が大きく、攪乱評価の余地あり)。
参考資料
- Clarkson, C. et al. (2017) “Human occupation of northern Australia by 65,000 years ago.” Nature.
Publisher page / PubMed / - Florin, S. A. et al. (2020) “The first Australian plant foods at Madjedbebe …” Nature Communications.
Publisher page - Hayes, E. et al. (2022) “65,000-years of continuous grinding stone use at Madjedbebe …” Scientific Reports.
Publisher page - Williams, M. A. J. et al. (2021) “Identifying disturbance in archaeological sites in tropical northern Australia …” Geoarchaeology.
Journal page(批判的見解) - Gundjeihmi Aboriginal Corporation(Mirarr, 伝統的所有者)関連情報。
Mirarr — GACページ