—出アフリカ|南ルートとサフル到達(補給と滞在が可能な「節点」)—
「南ルート」を具体化するカギは、連続した“線”だけでなく、補給と滞在が可能な「節点」です。本ノートでは、紅海南端のバブ・エル・マンデブ、マカラン海岸の潟・湧水、インド西岸の大潮差エスチュアリーを代表例として、湿潤期(Green Arabia)の窓と合わせて俯瞰します。
※主分類=南アジア:跨域=海域ネット(紅海南端(西アジア寄り)〜マカラン〜インド西岸)
30秒要点
- 湿潤期の窓:アラビアは後期更新世に複数回の湿潤期(MIS 7〜5、3)があり、湖・河川・オアシスが発達して内陸移動の余地が広がった。
- 沿岸の節点:バブ・エル・マンデブの狭窄部、マカラン海岸の潟・隆起海岸、カンバット湾などのエスチュアリーは資源パッチとして機能。
- 含意:節点間を結ぶ“線”は海面変動・テクトニクスの影響で変位。比定は概略に留め、湿潤期と干潟・淡水のセットで評価する。
対応マップ
このノートのピンは
#317239:レイヤーは04
です
本論:代表的な節点と資源
1)バブ・エル・マンデブ(紅海南端)
上部更新世の沿岸適応モデルでは、北東アフリカから紅海最南端の狭窄部を介して南アラビアへ渡った可能性が繰り返し論じられてきました。湿潤期には周辺の湧水・ワジ・低地が拡充し、短期逗留と補給の機会が増えたと推測されます。
2)マカラン海岸(イラン〜パキスタン)
隆起海岸・潟湖・扇状地・湧水の組み合わせが特徴的で、テクトニクスが作る段丘と沿岸流が長い砂州・干潟を育てます。更新世〜完新世の海岸線変動が著しく、資源パッチは移動しやすいが、連続した寄港地の鎖として機能しうる地形です。
3)インド西岸(カンバット湾など)
世界有数の大潮差エスチュアリーは干満で浅瀬と干潟を生み、汽水資源(貝・甲殻・魚)の潜在力が高い一方、堆積・侵食サイクルで遺跡保存は不利です。ここは“節点”としては魅力があるが、考古学的に見えにくい代表例でもあります。
4)砂漠内のオアシス(Jebel Faya周辺・ネフド古湖)
内陸ではスプリングや古湖群が短期の足場になり、湿潤期の窓に人の往来が指摘されています。Jebel Fayaの堆積・環境研究や、ネフド砂漠の古湖堆積の年代は、「乾燥域にも断続的な節点があった」ことを示します。
確度(A/B/C)
※このサイトでは、資料の信頼度(A / B / C)を簡単なラベルで示します。
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- A 公的・一次級で直接確認(一次が複数一致でもA)
- B 複数一次情報からの強い推定(反論や未確定部分あり)
- C 仮説寄り(一次が乏しい/矛盾/作業仮説段階)
- 「湿潤期の窓が内陸の節点を開いた」「沿岸に資源パッチが連なる」はA〜B。
- 節点の具体列の細線化は証拠が不足しC。
参考資料
- Beyin, A. (2011) “Upper Pleistocene Human Dispersals out of Africa: A Review of the Current State of the Debate.” International Journal of Evolutionary Biology.
Open Access(バブ・エル・マンデブを含む沿岸ルート概説)。 - Normand, R. et al. (2019) “Pleistocene Coastal Evolution in the Makran Subduction Zone.” Frontiers in Earth Science.
Publisher(マカラン海岸の地形発達)。 - Bretzke, K. et al. (2013) “The environmental context of Paleolithic settlement at Jebel Faya, UAE.” Quaternary International.
Publisher(内陸節点の環境文脈)。