唐の貞観年間に房玄齢らが撰した二十四史の一つ。晋(266–420)を主射程に、同時代の十六国(304–439)をも扱う。全130巻、紀伝体で本紀・志・列伝・載記を備える。313年の楽浪消滅など、東アジア周縁の参照にも用いられる。
基本情報
| 対象年代 | 266年〜420年(西晋・東晋)。関連として304年〜439年(十六国)の記事を含む。 |
| 成立時期 | 646年に編纂開始、648年に完成(唐・貞観20〜22)。太宗(李世民)の勅による官修正史で、体裁の整った正史本として確定。太宗自身の撰文が一部に含まれる。 |
| 編者 | 房玄齢(579–648)ほか(令狐徳棻・李延寿ら)。唐の史官グループによる共同編纂で、旧来の晋史諸書を整理・統合し、正史としての体裁を整えた。 |
体裁・構成
| 本紀10巻 | 晋歴代皇帝の紀年記事。 |
| 志20巻 | 制度・礼楽・地理などの総論(地理・官制の参照に有用)。 |
| 列伝70巻 | 人物伝記(官僚・将帥・学者ほか)。 |
| 載記30巻 | 五胡諸政権(十六国)君主などの年表的記事。 |
該当巻の例
『三国志』魏書(公孫氏列伝)/『晋書』宣帝紀
237年、公孫淵は「燕王」を自称して半独立化。魏・呉との外交を反復した末、東北縁の秩序不安を招く。238年、司馬懿が遼東を電撃攻略し、襄平を陥落。公孫淵は捕縛・誅殺され、公孫氏三代の政権は終わった。
『三国志』魏書(明帝紀・公孫氏列伝)/ 『晋書』巻一「宣帝紀」
238年、司馬懿は遼東で公孫淵を討ち(襄平陥落)、魏の東北秩序を再編。249年「高平陵政変」で曹爽政権を排し、実権を掌握。のちの晋建国の地ならしとなる。
主な注釈
- 『晋書集解』系(近現代の校注):巻次・出典の整序と校勘(研究用導入口)。
- 内府刊本・中華書局本(影印)など:原本の通読・参照に適する版。
よくある誤解と注意
- 「晋だけ」を記すわけではない → 正史本体は晋だが、同時代の十六国も載記として扱う(周辺政権の動向把握に必須)。
- 制度志は欠けない → 『三国志』と違い、『晋書』は志(制度・地理等)を備える。地理・郡県の参照は本書の長所。
- 唐代イデオロギーの影響 → 太宗の撰文や唐的価値判断が混じるため、褒貶は他史料と照合して読む。
