ー 【特集】秦から漢へ「原シルクロード」|秦の統一は何を整えた? ー
秦は関中と中原・北方前線を、駅伝制の官道〈馳道〉と最短幹線〈直道〉で高速接続した。とくに「函谷関(Hangu Pass:要の関所)」は政都圏の出入口となり、詔令・兵站・市場の流れを一本化する“回廊”を可視化した。ただし直道の全区間の詳細線形は未確定部分が残る。
いつ・どこまで言えるか
- いつ:前3世紀末〜前2世紀初頭に主要幹線が整備。
- どこまで:幹線網の存在・役割は確実(B)。駅位置や細線形は地域により未確定(C)。
馳道と直道の違い
- 馳道:官道ネットワークの総称。駅(宿)を中継して文書・人馬・物資を高速搬送。
- 直道(秦直道):関中から北方防衛線をできるだけ直線的につなぐ最短幹線。前線機動と監視を目的。
※秦直道(しん・ちょくどう):直道の代表例。北の九原方面へ伸びる軍用幹線(経路は一部不確実)。
回廊としての働き(函谷関を軸に)
関中の政都圏から「函谷関(Hangu Pass)」を抜けて中原へ出る導線が、詔令・徴発・市の物流を同じルートで往復させた。結果として、行政・軍事・経済が同じ道筋で回る「一体回廊」が形成される。
北縁の防衛ラインと回廊の接点
「秦長城(北縁の概略線)」は、関中から北方前線へ延びる直道と機能的に結びつく“外側の縁”として理解できる。連続一線というより、地形を生かした区間ごとの防御帯の連なりで、兵站は内側の幹線(馳道・直道)で支えられた(線形の細部=確度C/防御帯の存在と役割=確度B)。
北方の「雁門関(北防の関門)」は、前線側の出入口として機能し、監視・徴発・通行統制の節点になった。関門自体の位置比定は確かで(確度A)、直道との補完関係が文献・地理で整合する(確度B)。
対応マップ
ピンの色: #000000
確度 A/B/C
※このサイトでは、資料の信頼度(A / B / C)を簡単なラベルで示します。
詳しくは 凡例:、資料の信頼度(A / B / C)へ →
- A 公的・一次級で直接確認(一次が複数一致でもA)
- B 複数一次情報からの強い推定(反論や未確定部分あり)
- C 仮説寄り(一次が乏しい/矛盾/作業仮説段階)
- B:幹線の存在と役割は文献・地理整合で確認。
- C:直道の連続線・駅の正確位置は研究途上で、再比定の余地がある。