狭義:1853–1868年(ペリー来航〜王政復古・戊辰開戦)
広義:1840s–1868年(阿片戦争の衝撃・通商要求の本格化〜維新)
30秒要点
- 時期:1853〜1868年(ペリー来航〜王政復古・戊辰戦争開始)。江戸から明治への転換期。
- 外交・条約:日米和親条約(1854)→安政の五カ国条約(1858、通商開始)※領事裁判権・関税自主権の制限。
- 政治の動き:安政の大獄(1858–59)/桜田門外の変(1860)/公武合体と尊王攘夷の対立→ 薩長同盟(1866)→大政奉還(1867)→王政復古(1868)。
- 対外事件:生麦事件・薩英戦争(1862–63)/四国艦隊下関砲撃(1864)。
- 社会・経済:開港(横浜・長崎・函館ほか)で生糸輸出拡大、金銀比価差で金流出・物価変動。
ミニ年表(ざっくり)
1853 | ペリー来航(浦賀)。 |
1854 | 日米和親条約(下田・函館開港)—つづいて露・英・蘭とも同様。 |
1858 | 日米修好通商条約(安政条約)—英・仏・露・蘭とも締結/安政の大獄。 |
1860 | 万延遣米使節(咸臨丸・ポーハタン)/桜田門外の変。 |
1862–63 | 生麦事件→薩英戦争。 |
1863–64 | 攘夷をめぐる武力衝突(長州藩下関砲撃・四国艦隊の報復)。 |
1866 | 薩長同盟。 |
1867 | 大政奉還(10月)→王政復古の大号令(12月)。 |
1868 | 戊辰戦争始まる(—明治新政府へ)。 |
幕末を俯瞰
幕末を時系列で読む
黒船が浦賀に現れると、日本は条約によって港を開き、世界の商流に巻き込まれた。通商が始まると金銀の比価差で 金が流出し、国内の物価は大きく揺れる。政治の中心では、条約をめぐる判断や人事を背景に安政の大獄と 桜田門外の変が起こり、朝廷と幕府、諸藩の思惑が交錯していく。
外国船との衝突は薩英戦争や下関戦争へ発展したが、その過程で西洋軍事技術の現実も学ばれた。 政治は公武合体と尊王攘夷の間で揺れ動き、やがて薩長同盟が成立。将軍は政権を朝廷に返す 大政奉還を行い、続く王政復古で新体制が動き出す。戊辰の戦いを経て、近代国家への道が開かれた。
① 政治・制度
- 幕政の動揺:将軍継嗣問題・条約勅許問題→安政の大獄→桜田門外の変。
- 公武合体(和宮降嫁など)と尊王攘夷の対立・転換(開国・公議政体論へ)。
- 薩長同盟(1866)→大政奉還(1867)→王政復古(1868)。
② 外交・対外
- 和親条約→通商条約(1854→1858):開港・開市、関税自主権の制限・領事裁判権。
- 対外事件:生麦事件→薩英戦争、長州の攘夷砲撃→四国艦隊下関砲撃。
- 開港地:横浜・長崎・函館(1859開港)などの居留地形成と国際商業。
③ 社会・経済
- 貿易開始に伴う物価騰貴・金銀比価差による金流出、生糸など輸出の急増。
- 各藩の洋式軍制・造船・反射炉建設、貨幣・財政の再編の模索。
- 都市・港湾の発展(横浜中心)、情報・人の移動が活発化。
④ 文化・宗教・思想
- 学問の展開:蘭学→洋学へ。蕃書調所(洋学所)・長崎海軍伝習所などで西洋知識を受容。
- 思想・運動:尊王攘夷・公武合体・開国論など多様な政治思想が併存。
- 出版・報道:開港地を中心に新聞・翻訳書が増加(近代的メディアの萌芽)。
⑤ 考古・技術・史料
- 条約・外交文書:日米修好通商条約・英仏露蘭との通商条約。
- 軍事・産業遺構:反射炉跡・製鉄所・造船所(各藩の洋式化の痕跡)。
- 記録:公家・武家の日記、開港地の居留地文書・航海記録。
よくある誤解とチェック
- 「大政奉還で争いは終わった」 → ×。直後に王政復古・戊辰戦争へ続く。
- 「攘夷=外国をただ追い払う政策」 → ×。事件を経て多くの藩は開国・富国強兵へ転換。
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