【絶頂からの転落】百済が「一度滅びかけた」という衝撃
ドラマ『近肖古王(クンチョゴワン)』の時代、百済は黄金時代を謳歌していました。その友情の証が、日本の石上神宮に眠る国宝「七支刀(しちしとう)」。当時の最新技術を誇る百済から、同盟国・日本へと贈られた「軍事同盟の契約書」のようなものでした。
しかし、4世紀末。高句麗の「怪物」こと広開土大王・長寿王親子の南下により、百済はどん底に突き落とされます。475年、ついに首都・漢城(現在のソウル)が陥落。時の王・蓋鹵(がいろ)王が処刑され、百済は事実上の「経営破綻(ゲームオーバー)」寸前まで追い込まれました。

【日本の役割】海を越えた「バックアップ・データ」としての王族
なぜ、百済は滅びなかったのか? それは、王位を継ぐスペア(バックアップ)が安全な日本に保管されていたからです。
当時、百済の王族は交代で日本に滞在していました。これは単なる人質ではなく、「本国が危ない時のための予備」を置いておくという高度な外交戦略でした。
武寧王と東城王:数奇な運命を辿った二人の王
ドラマ『スベクヒャン』にも登場する、武寧王(ムニョンワン)と東城王(トンソンワン)
- 第24代 東城王: 日本育ちの帰国子女。暗殺が続く混乱を立て直すため、日本から武器と兵を携えて帰国。
- 第25代武寧王:島で生まれた王)。 史実では東城王の子(または兄)など諸説あります。ただ、確実なのは、彼もまた日本と深い縁があることです。
【歴史のハマりポイント】日本書紀と一致した「奇跡の証拠」
『日本書紀』には、王子・昆支が日本へ向かう途中、筑紫の各羅嶋(かからしま)で生まれた子が「嶋君(後の武寧王)」だと記されています。 1971年、韓国の武寧王陵から発見された墓誌には、王の実名が「斯麻(シマ)」と刻まれていました。1500年前の古文書と出土品が一致した、鳥肌モノの瞬間です。
【余談】当時の韓国南部は「リトル・トーキョー」だった?
なぜ日本はこれほど百済を助けたのか。そこには「伽耶(任那)」の存在がありました。
ここは日本にとって「鉄」の重要な仕入れ先であり、多くの日本人が世代を超えて暮らす「日系コミュニティ」のような場所でした。窓口を失いたくない日本と、国を再興したい百済。両者の利害が一致し、強力な「バックアップ体制」が完成したのです。
スベクヒャンと手白香(日本の皇女):ドラマが描こうとしたもの
ドラマの主人公「守百香(スベクヒャン)」は架空の人物ですが、そのモデルの一人とされるのが日本の手白香皇女(たしらかのひめみこ)です。
救世主にして暴君・雄略天皇
ここで重要なのが、第21代・雄略天皇。
- 百済には: 島で生まれた武寧王を保護し、東城王の帰国を全面支援した恩人。
- 国内では: 即位の邪魔な親族を次々と暗殺した「大悪天皇」。
この「怖すぎるほど強い味方」がいたからこそ、百済のバックアップは機能しました。そして、その孫娘が手白香皇女です。
手白香皇女は、直系の後継者が途絶えたヤマト王権において、血統の正統性を守る最後の鍵でみありました。
彼女は、血縁が薄く地方(越前)から迎えられた第26代・継体天皇の皇后になりました。雄略天皇の血を引くを皇后を迎えることで、継体天皇は正統な天皇として認められることとなったのです。
【ハマりポイント!】 日本と百済、どちらも「滅亡の危機」を乗り越え、新しい王統(継体・武寧)が国を再建する。ドラマの作者は、両国を支えた「強い女性」のイメージを、この歴史のシンクロから着想したのかもしれませんね。
新羅との同盟が次の悲劇を生む
百済を再興した東城王は、強国・高句麗に対抗するため、新羅の王族と結婚し「最強タッグ(羅済同盟)」を組みました。
しかし、この「生き残るための同盟」が、皮肉にも次の世代で「裏切りと憎しみの100年戦争」へと変わっていきます。
聖明王が日本に贈った「プレゼント」
ドラマで聡明な太子として描かれるミョンノン(聖明王)。彼は、日本の第29代・欽明天皇へ「仏教」を贈ります。
欽明天皇は、「地方から来た実力者」である継体天皇と、「直系の血筋」を持つ手白香皇女(雄略天皇の孫)の間に生まれ、「実力と血統を兼ね備えたサラブレッド」でした。
【歴史の深掘り】実は、継体天皇から欽明天皇にかけての時期(6世紀前半)は、日本の古代史最大のミステリーの一つでもあるんです…なんだか意味深ですね!!
日本も「スベクヒャン」ばりの後継者争い中だったのかもしれません?
聖明王の悲劇は突然訪れます。 ともに戦ってきたはずの新羅(真興王)が、百済の領土を奪い、裏切ったのです。激怒した聖明王は新羅に攻め込みますが、待ち伏せに遭い、命を落としてしまいます。
この瞬間、百済と新羅の友情は完全に決裂しました。ここからは『善徳女王』や『階伯』へと続く、百済と新羅の骨肉の争いへと歴史が動いていくのです…。
ちなみに、新羅(真興王)は、あのドラマ『花郎(ファラン)』のジディです。そして新羅(真興王)と百済(聖明王)の孫同士の悲恋は、ドラマ『薯童謠(ソドンヨ)』でどうぞ。
