教科書標準:約1万数千年前 〜 紀元前4世紀ごろ
考古学的区分(研究メモ):約1.4万年前 〜 紀元前10〜前3世紀ごろ(地域差/弥生と重複)
※重複帯:紀元前10〜前4世紀ごろは地域差が大きく、弥生と重複。
30秒要点
- 時期:およそ約1万4千年前〜前4世紀ごろ(のち弥生へ移行)。
- 生活:狩猟・採集・漁労を基盤に、竪穴住居の集落で比較的定住。
- 環境:縄文海進で温暖・多湿、海面上昇により沿岸資源が豊富。
- 道具・技術:縄文土器(世界最古級)で煮炊き・保存/磨製石斧・弓矢・骨角器。
- 文化:貝塚、土偶、石棒、環状列石(石の環)/屈葬・抜歯などの風習。
- 交易:黒曜石・ヒスイなどの広域移動(産地と分布が対応)。
ミニ年表(ざっくり)
約1万4千年前 | 縄文時代の開始(縄文土器の普及が進む)。 |
前6000〜前4000年ごろ | 縄文海進で海面上昇、沿岸資源が豊富に。 |
中期(前3000年ごろ) | 集落の拡大・土器文化の隆盛(火焔型土器など)。 |
後・晩期 | 寒冷化傾向の中、大規模集落や石の祭祀遺構(環状列石など)。 |
前4世紀ごろ | 弥生時代へ(稲作の本格化・金属器の使用へ移行)。 |
縄文時代を俯瞰
縄文時代を時系列で読む
温暖で湿った気候のもと、海は入り江を深く刻み、森は木の実を豊かに実らせた。人びとは竪穴住居を中心とする集落に暮らし、 狩猟・採集・漁労を組み合わせ、縄文土器で煮炊きや保存を行った。弓矢や骨角器、磨製石斧を駆使し、 集落には貝塚が重なり、祭祀や祈りの形として土偶や石棒、環状列石が残る。
中期には大きな集落が各地に見られ、土器や装身具は多彩になる。やがて気候が揺れ動くなかでも、人びとは森と海の恵みを繋ぎ、 黒曜石やヒスイといった素材を遠くへ運び合った。こうして蓄えられた技術と社会の地盤の上に、 前4世紀ごろから弥生時代の新たな生産(稲作)と金属器の使用が重なっていく。
① 政治・制度
- 国家・法制度・階層的統治は未成立だが、集落(ムラ)のまとまりと共同作業が発達。
- 集落内に広場が形成される例があり、住居は竪穴住居が基本。
② 外交・対外
- 国家間の外交は存在しない時代区分。
- 黒曜石(例:北海道白滝・伊豆神津島)やヒスイ(糸魚川)などの広域移動が確認できる。
③ 社会・経済
- 狩猟・採集・漁労の複合生業。木の実のアク抜き・貯蔵穴が発達。
- 大型集落では住居群+貯蔵+共同作業が見られ、栗などの栽培跡が確認される地域もある。
- 弓矢(石鏃)、骨角器、漁労具(釣針・銛・網の使用)など。
④ 文化・宗教・思想
- 縄文土器(深鉢・火焔型など)、装身具(貝輪・勾玉)。
- 土偶・石棒・環状列石などの祭祀遺構・遺物。
- 屈葬や抜歯などの埋葬・通過儀礼が見られる。
⑤ 考古・技術・史料
- 大森貝塚(東京):貝塚研究の出発点(発見:モース)。
- 加曽利貝塚(千葉):大規模な貝塚。
- 三内丸山遺跡(青森):大規模集落・貯蔵・木材利用などが良好に残る。
- 大湯環状列石(秋田):代表的な環状列石。
- 技術:磨製石斧、弓矢、骨角器、土器製作(縄目文様)。
よくある誤解とチェック
- 縄文=完全な遊動生活 → ×。竪穴住居の集落が各地に形成され、比較的定住が進む。
- 縄文で稲作が広く普及 → ×。栽培の痕跡はある地域もあるが、本格的な水稲農耕は弥生。
- 大森貝塚は日本人研究者の発見 → ×。エドワード・モースによる発見で知られる。
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