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「昔からこうだった」は本当?|歴史を現代の常識で見てはいけない理由

初詣は神社、お葬式はお寺。

当たり前に使い分けているこの線引きが、実は150年ほど前にできたばかりのものだと聞いたら、どう思われるでしょうか。

歴史を調べていると、必ずぶつかる壁があります。それは「今、目の前に残っているもの」を、そのまま昔の姿だと思い込んでしまうこと。歴史を読み間違える、いちばんよくある落とし穴です。

この記事では、その落とし穴の正体と、そこにはまらないための考え方をご紹介します。難しい史料が読めなくても、この視点があるだけで、神社やお寺、博物館の見え方が変わります。

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落とし穴は2種類ある

私たちは無意識に「現代の常識」を過去に持ち込んでいることがあります。

この勘違いには、ちゃんと名前がついています。

呼び名どんな勘違いかよくある例
アナクロニズム(時代錯誤)今の姿が、昔もそうだったと思い込む神社は昔から仏教とは無関係だったはず
現在主義今の価値観で、過去を採点してしまう昔の人はなぜもっと合理的に考えなかったのか

祖父母の若い頃の写真を見て、「なぜスマホを持っていないんだ」と怒る人はいません。当時はなかったのだから当たり前です。

ところが歴史の話になると、私たちは平気で同じことをしてしまいます。当時の人が持っていなかった知識や価値観を、当然あるものとして計算に入れてしまうのです。

言い伝えは「その時代の鏡」

もうひとつ、大事な視点があります。

お寺や神社には、たいてい由緒書き(縁起)が伝わっています。「この寺は〇〇上人が夢のお告げによって開いた」といった、あの物語です。

こうした縁起の多くは、書かれた出来事よりずっと後の時代——中世に、まとめて作られたものです。目的は、土地の権利を主張したり、格式の高さを示したり、参拝客を集めたり。つまり、当時の必要から生まれた文章なのです。

ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。

縁起は「語られた出来事の史料」ではなく、「語った時代の史料」として読む。

たとえるなら、家に伝わる自慢話のようなものです。「うちの先祖は武士だった」という話の中身が本当かどうかより、誰が、いつ、何のためにその話を語り始めたのかのほうが、はるかに多くを教えてくれます。

覚えておきたい3つの問い

では、実際に何かを調べるとき、どうすればいいのか。次の3つを分けて考えるだけで、見通しがぐっと良くなります。

  1. いつの史料か — 出来事が起きた年代と、それが書かれた年代は別物です
  2. 誰が書いたか — 当事者の自己申告なのか、第三者の記録なのか
  3. 何のために書かれたか — 権利の主張、格式の誇示、集客。目的は必ずあります

この3つを意識するだけで、「そう書いてあるから本当」から一歩抜け出せます。

「創られた」=ニセモノ、ではない

ここまで読んで、少しがっかりされたかもしれません。「昔からと思っていたものが、実は新しかったなんて」と。

でも、そうではないのです。

こうした現象は日本だけのものではありません。スコットランドの氏族ごとのタータンチェックの柄も、実は19世紀にかなりの部分が創作されたものです。日本の「武士道」も、新渡戸稲造が1900年に英語で書いた本から広まりました。歴史学ではこれを「創られた伝統」と呼び、近代国家が生まれる時期に世界中で同時多発した現象として知られています。

けれど、百年以上受け継がれてきたなら、それはもう立派に本物の伝統です。

大切なのは、ニセモノだと切り捨てることではなく、いつ、誰が、なぜ作ったのかを知ったうえで味わうこと。それを知っていると、神社に立ったとき「この形は明治以降のものだな、では元は何だったんだろう」と、一段深く見えてきます。

まとめ|「昔のまま」より「地層」で見る

古い民家を思い浮かべてください。

江戸時代の柱が残り、昭和に貼られた壁があり、令和のキッチンが入っている。どれか一つだけが本物なのではなく、全部ひっくるめてその家の歴史です。

神社もお寺も、言い伝えも、まったく同じです。「昔のまま残っているもの」を探すとがっかりしますが、どの時代に、誰が、何を足したかの地層だと思って眺めると、見どころはむしろ増えていきます。

真実が知りたい、と思ったときに必要なのは、正解を一つ見つけることではなく、この地層を読む目なのだと思います。

次回からは、この視点を使って具体的な例を見ていきます。まずは、いちばん身近な「神社とお寺はいつ分かれたのか」から。

この視点で読み解いてみる

「昔からこうだった」と思っているものを、ひとつずつ地層に分けてみる。そんな記事を、ここに集めていきます。気になったところから、どうぞ。

例1|神社とお寺は、いつ分かれたのか

初詣は神社、お葬式はお寺。この当たり前の線引きを引いたのは、明治政府でした。

その先には、壊された仏像から「国宝」が生まれるまでの経緯や、仏でも神でもない「権現」という第三の存在の話がつながっています。

神仏分離とは?神社とお寺が明治に分かれた理由をわかりやすく解説神社にはお坊さんがいた——そう聞くと驚かれるでしょうか。 明治以前の千年以上、神様と仏様は同じ境内で当たり前に同居していました。 千年以上、神様と仏様は同居して…

最後まで読んでいただき、ありがとうございました🍵