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【知識ゼロからの仏像①】如来・菩薩・明王・天——この4つがわかれば、お寺めぐりが変わる

お寺や博物館で仏像の前に立って、「立派だなあ」で終わってしまう。私はずっとそうでした。

でも仏さまの世界には、4つの階層があります。これを知っているだけで、目の前の像が何者なのかが、ほぼ3秒でわかるようになります。

しかも、名前を覚える必要はありません。見た目だけで判別できます。

まず、この表だけ

階層どういう立場か見た目の特徴代表
如来(にょらい)悟りきった、いちばん上装飾なし。布一枚釈迦如来・阿弥陀如来・大仏
菩薩(ぼさつ)修行中。悟りを目指している冠・首飾り・腕輪で豪華観音菩薩・弥勒菩薩
明王(みょうおう)力ずくで導く担当怒った顔・武器・炎不動明王・愛染明王
(てん)仏教を守る神々鎧・武器。姿はさまざま四天王・毘沙門天・阿修羅

この並びには、ひとつ法則があります。

上に行くほど、持ち物が少ない。

偉い人ほど質素になっていく。これが仏像を見分ける、いちばん大きな手がかりです。

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① 如来——ぜんぶ捨てた人

悟りを開いた、最上位の存在です。

見分け方はかんたんで、何も身につけていません。薄い布を一枚まとっているだけ。冠もネックレスも腕輪もありません。悟るというのは、要するに全部手放すことだからです。

頭にも特徴があります。

  • 螺髪(らほつ)——頭のつぶつぶ。巻き毛が固まったものとされます
  • 白毫(びゃくごう)——眉間の白い点。ここから光を放つとされます

この2つがあれば、まず如来です。

代表格は、お釈迦さまである釈迦如来、極楽浄土の阿弥陀如来、そして薬師如来。薬師如来は手に薬の壺を持っているので、これも見分けやすい一体です。

奈良の大仏(東大寺)は盧舎那仏といって、これも如来。あの巨体でも、身につけているのは布一枚です。

例外がひとつだけ
大日如来だけは、冠とアクセサリーを着けています。如来なのに豪華。ここは②のあとでもう一度出てきます。

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② 菩薩——まだ捨てていない人

悟りを目指して修行中の存在です。ランクは如来の下ですが、見た目は菩薩のほうが圧倒的に豪華です。

なぜか。菩薩の姿のモデルは、悟りを開く前の、王子だったころのお釈迦さまだからです。まだ王宮にいて、まだ何も捨てていない。だから冠をかぶり、首飾りを垂らし、腕輪をつけている。

  • 宝冠——頭の冠
  • 瓔珞(ようらく)——胸元の豪華な飾り
  • 天衣(てんね)——肩から流れる細長い布

観音菩薩、弥勒菩薩、文殊菩薩、普賢菩薩。よく聞く名前はだいたいこの組です。

例外がひとつだけ
地蔵菩薩は、お坊さんの姿をしています。剃った頭に質素な衣、手には杖と玉。菩薩なのに地味。お地蔵さんを思い浮かべてください、そのままです。

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③ 明王——怒っている人

怖い顔をして、武器を持ち、背中に炎を背負っている。それが明王です。

初めて見ると「仏さまなのに、なぜこんなに怒っているのか」と思います。理由はこうです。

優しく言っても聞かない相手がいるから。

穏やかに諭してもダメな人を、力ずくでも救う。そのために、如来がわざと恐ろしい姿に変身したもの——それが明王です。だから怒っているのは、怒っているのではなく、必死なのです。

代表は不動明王。剣と縄を持ち、岩の上に座り、炎を背負っています。この不動明王は、さきほど例外として出てきた大日如来が変身した姿だとされています。如来と明王は、実はつながっています。

もう一体、愛染明王は全身が真っ赤で、弓矢を持っています。

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④ 天——中途採用組

いちばん人数が多くて、いちばんバラバラなグループです。

理由は出自にあります。天は、もともとインドの神さまだった存在です。仏教が生まれる前からインドで信仰されていた神々が、あとから仏教に取り込まれ、「仏を守る役」として組み込まれました。

いわば中途採用組。もとの職場が違うので、姿かたちも統一されていません。

  • 四天王——お堂の四隅で鎧を着て立っている武将風の4体
  • 金剛力士(仁王)——山門の左右にいる、上半身裸の筋肉質な2体
  • 梵天・帝釈天——インドの最高神たちが仏教に入ったもの
  • 毘沙門天——四天王の多聞天が単独で信仰されたもの
  • 吉祥天・弁才天——女性の姿をした天
  • 阿修羅——もとは戦いの神

鎧を着ていたら、まず天。これが手がかりです。

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番外:仏さまではなく、人間の像もあります

お寺には、実在した人間の像も置かれています。高僧の姿を写した像です。

弘法大師(空海)の坐像、鑑真和上の像などがそれです。冠もなければ怒ってもいない、ただのお坊さんの姿をしているので、4階層に当てはめようとすると混乱します。

「これは人間だ」と切り分けてしまえば、それで済みます。

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現場で使える、3秒の判定手順

お寺で実際に立ち止まったら、この順に見てください。

1. 頭を見る
つぶつぶ(螺髪)→ 如来
冠 → 菩薩

2. 顔を見る
怒っている → 明王か天

3. 装備を見る
鎧・甲冑を着ている →
炎を背負って剣を持っている → 明王

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奈良で、さっそく試せます

奈良のお寺は、この4階層の実物見本市のような場所です。

場所階層
東大寺 大仏殿盧舎那仏(大仏)如来
東大寺 南大門金剛力士像
興福寺 国宝館阿修羅像
薬師寺 金堂薬師三尊像如来+菩薩
法隆寺 大宝蔵院百済観音像菩薩

薬師寺の薬師三尊は、この構成を覚えるのに最適です。中央に薬師如来、その両脇に日光菩薩と月光菩薩。

中央が如来、両脇が菩薩——これは「三尊形式」といって、お寺でいちばんよく見る配置です。真ん中がいちばん質素で、両脇のほうが着飾っている。ここまで読んでくださった方なら、もう理由がわかるはずです。

まとめ

  • 仏さまには如来・菩薩・明王・天の4階層がある
  • 上に行くほど、装飾が少ない
  • 頭 → 顔 → 装備 の順に見れば、3秒で判別できる
  • 例外は大日如来(豪華な如来)と地蔵菩薩(質素な菩薩)の2つだけ

名前を覚えなくても、見た目だけでここまでわかります。次にお寺に行くとき、目の前の像がぐっと近くなるはずです。

実はこの4階層、宗派によって主役が入れ替わります

奈良のお寺では①如来と②菩薩が中心です。ところが密教(真言宗・天台宗)のお寺に行くと、③明王と④天が一気に前に出てきます。※天台宗(比叡山)は、密教のほかに法華経や禅も含む総合的な宗派です。密教はその一部と考えてください。

京都の東寺や高野山で「怒った顔の仏さんが多いな」と感じるのは、気のせいではありません。次回は、その理由をお話しします。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました🍵