好奇心の赴くままに。気になったことを、気ままに深掘り

東京国立博物館の回り方|平成館・東洋館で古代をたどる1日モデルコース

上野の東京国立博物館、通称「トーハク」。
日本でいちばん古い博物館です。

ただ、初めて行く人がいちばんつまずくのは「広さ」ではありません。
「どこに何があるか分からないまま入ってしまう」ことです。

この記事は、2026年9月に私が実際に歩いたモデルコースです。
そしてもうひとつ、トーハクの展示室と、このブログの記事をつなぐ地図にもなっています。

この記事でわかること中身
回り方9:30〜17:00の7時間半で、古代を中心に、江戸まで一本の線で見る順番
行く前に読む記事予習しておくと面白くなる記事へのリンク(実際に展示を見て、写真を追加しています)
行ってわかったこと特別展の行列、休憩、食事など、行かないと分からないメモ

行く前の予習にも、行ったあとの答え合わせにも使ってください。

AD – 読み進める前のひとやすみ

トーハクは1つの博物館ではない──6つの建物の集合体

トーハクは「大きな建物が1つある」のではなく、
中身のまったく違う建物が6つ、庭を囲んで建っている場所です。

正門を入って正面に見える立派な建物は「本館」ですが、
本館だけ見て帰ると、見どころの半分以上を素通りすることになります。

6つの建物と、その中身

本館(日本ギャラリー)

東京国立博物館 本館の玄関
本館の玄関。瓦屋根をのせた和洋折衷の建物です。(筆者撮影)

ここが本丸です。日本美術がまるごと入っています。しかも構成がよくできていて、

  • 2階が「時代順」 ── 縄文から江戸まで、歩くだけで日本美術の流れをたどれる
  • 1階が「ジャンル別」 ── 彫刻、金工、陶磁、刀剣など、分野ごとに深掘りできる

2階を一周すると、教科書を一冊めくったことになります。

なお2026年4月から展示室の番号が振り直されました。1階が1〜9室、2階が11〜20室です。※ネット上の古い攻略記事は番号がずれているので注意。

平成館

平成館の外壁に掲げられた特別展「空海と真言の名宝」のポスター
平成館の外壁。2026年夏の特別展は「空海と真言の名宝」でした。(筆者撮影)
  • 1階が「日本の考古」 ── 旧石器・縄文・弥生・古墳の出土品
  • 2階が「特別展」 ── 期間限定の大きな展覧会

私にとっては、ここが今回の主戦場でした。伽耶から渡ってきた技術の痕跡は、1階に集まっています。

💡平成館は、2階が特別展、1階が考古展示室。同じ建物です。人気の特別展の時期は、平成館の入口に行列ができていることがあります。

でも、考古展示室(常設)だけを見る人は、その列に並ぶ必要はありません。本館と平成館は館内でつながっていて、私は、係の人に本館の中を通って平成館へ行くようすすめられました。展覧会によって案内が変わることもあるので、当日は係の人に聞いてみてください。

東洋館(アジアギャラリー)

東京国立博物館 東洋館
東洋館。本館の右手にあります。(筆者撮影)

中国、インド、エジプト、西アジア、そして朝鮮半島。アジア各地の美術と考古が入っています。伽耶や三国時代のものを見るならここです。

法隆寺宝物館

東京国立博物館 法隆寺宝物館の外観
法隆寺宝物館。(筆者撮影)

奈良の法隆寺から皇室に献納された宝物を収める建物。飛鳥時代の小さな金銅仏がずらりと並ぶ空間は、写真で見るだけでも独特です。

表慶館

東京国立博物館 表慶館
緑のドームが目印の表慶館。(筆者撮影)

明治時代の洋風建築。ただし催し物があるときだけ開館します。何もない時期は閉まっているので、外観を楽しむつもりで。

黒田記念館(敷地の外)

黒田記念館
レンガ造りの黒田記念館。(筆者撮影)

洋画家・黒田清輝の作品を収める建物。ここだけ観覧無料です。上島珈琲店 黒田記念館店は7時30分から営業しています。(後半のメモで紹介します)。

建物中身ひとことで言うと
本館日本の美術(縄文土器から江戸絵画まで)トーハクの背骨
平成館1階=考古展示室/2階=特別展日本の古代はここに全部ある
東洋館中国・朝鮮半島・インド・西アジアもう一つの博物館
法隆寺宝物館飛鳥時代の宝物約300件静かすぎる穴場
表慶館催しがあるときだけ開く開いていたらラッキー
黒田記念館洋画家・黒田清輝の作品別棟。時間が余ったら

ポイントは、日本の古代(縄文・弥生・古墳)は本館ではなく「平成館の1階」にあるということです。

建物の外にも、江戸の名残がある

展示室の外を歩くと、大名屋敷の門や鬼瓦など、江戸時代の建物の一部にも出会えます。展示室で疲れたら、外の空気を吸いがてら見てみてください。

旧因州池田屋敷表門(黒門)
旧因州池田屋敷表門(黒門)。(筆者撮影)
黒田家の江戸屋敷鬼瓦
黒田家の江戸屋敷鬼瓦。(筆者撮影)

チケット・休憩・持ち物のメモ

特別展のチケットがあれば、同じ日の東博コレクション展(常設)も見られます。1枚で両方見られるので、一見お得です。

ただ、実際に行ってみて、1日で特別展もコレクション展もは無理だと感じました。私は本番の前日に特別展「空海と真言の名宝」(一般 2,300円)へ行きましたが、入場まで40分並びました。特別展は、並ぶ時間が読めません。

そこで私は2日に分けました。1日目は特別展を早めに切り上げて、同じチケットで東洋館と法隆寺宝物館へ。2日目は、この記事のモデルコースで丸一日です。

チケットと開館時間(2026年9月時点)

東博コレクション展(常設)一般1,000円、大学生500円
無料になる人高校生以下・満18歳未満・満70歳以上(年齢のわかるものを提示)
開館時間9:30〜17:00(金曜・土曜は20:00まで)
休館日月曜(祝日の場合は開館し、翌平日が休み)
特別展のチケット同じ日に限り、東博コレクション展も見られる
再入館同じ日なら、同じチケットで戻れる

窓口は混雑時に待つこともあるので、オンラインで買っておくと朝の列に並ばずに済みます。料金や時間は変わることがあるので、行く前に公式サイトで確認してください。

休憩と食事──行ってわかったこと

  • ゆったり座れる場所はたくさんあります。歩き疲れても休む場所には困りませんでした
  • ただしネットにつながりにくい場所が多かったです。予習記事やフロアマップは、行く前にスクリーンショットで保存しておくと安心です
  • 特別展の混雑でレストランがどれくらい待つか読めなかったので、傷みにくいおやつとゼリー飲料を買って持って行きました。展示室内での飲食はできません。※平成館1階ラウンジと本館地下1階のドリンクコーナー、東洋館テラス、屋外のテーブルやベンチで飲食ができます。
  • 館内のレストランを使うなら、12時台は混むので11時半に入るか、13時まで待つのがおすすめです

2日目の朝には、黒田記念館の建物に併設された上島珈琲店に寄りました。格子や欄間のような木の飾りがあって落ち着いた雰囲気で、一日のスタート前にひと息つくのにぴったりでした。

黒田記念館の建物にある上島珈琲店2F。(筆者撮影)

持ち物と注意

  • 歩数が想像の倍になるので、靴は歩き慣れたもの
  • 展示室は保存のため通年やや涼しい
  • 写真撮影は基本OKですが、フラッシュ・三脚は不可。個別に撮影禁止の作品もあります
  • 展示替えがよくあります。ここに書いた品が出ていない日もあるので、公式サイトの「展示替え情報」を見ておくと、がっかりが減ります

歩き出す前に:博物館でも使える基本の6本

トーハクは、予習の有無で楽しさが本当に変わります。
「知っているものが目の前に出てくる」という体験が、丸一日ずっと続くからです。

ここに挙げたのは、時代ごとに「どこを見ればいいか」の物差しをまとめた記事です。博物館に行く予定がなくても、学校で習った日本の歴史を、モノから見直す読みものとしてもどうぞ。

見る場所読んでおく記事
平成館・旧石器博物館で何を見る?──旧石器時代、列島の入口は3つあった
平成館・縄文・弥生博物館で何を見る?──縄文1万年と、弥生600年で変わった日本
平成館・古墳/東洋館5階博物館で何を見る?──古墳時代350年、王はどう変わったか
平成館・飛鳥/法隆寺宝物館(中身は7世紀)博物館で何を見る?──飛鳥時代、豪族は墓をやめて寺を建てた
平成館・奈良/法隆寺宝物館(蔵としてくらべる)博物館で何を見る?──奈良時代、宝物は埋めずに蔵に残された
平成館・考古展示室(テーマ展示)/本館1階6室北海道と沖縄に弥生時代はない|同時に動いていた3つの時計
本館2階日本美術は「誰が注文したか」でわかる

歩き出す前に:海を渡ってきた4つの道──青銅器・ガラス・仏像・やきもの

基本の6本が「時代」で見る物差しなら、こちらは「国をまたいで」見る物差しです。
青銅器もガラスも仏像もやきものも、海の向こうから日本へ届いた道として並べ直すと、1本の流れになります。1日の順路ではばらばらの建物で見るものを、先に1本の道にしておきましょう。

ただ、その前にひとつだけ。

これから4本とも「中国 → 朝鮮半島 → 日本」の順にたどります。ところが展示室を移ると、キャプションの時代名が変わります。

東洋館3階では「唐時代」、5階では「三国時代」、平成館では「古墳時代」。同じころの話なのか、ずれているのか、その場では分かりません。

そこで、横に並べた年表を作りました。スマホで開きながら歩くと、建物を移動しても迷いません。

中国王朝一覧・年表|統一と分裂の歴史を朝鮮半島・日本と並べて見る中国史が苦手な理由は、はっきりしています。名前が多すぎる。 殷、周、秦、漢、三国、晋、南北朝、隋、唐、五代十国、宋、遼、金、元、明、清。順番に覚えろと言われても…

とくにややこしいのが朝鮮半島の「三国時代」です。高句麗・百済・新羅の3つが並び立った時代で、日本の古墳時代から飛鳥時代にあたります。

このあと出てくる4本の道すべてで、日本のすぐ上流に現れるのがこの時代です。ここを押さえておくと、東洋館5階が一気に読めるようになります。

高句麗・百済・新羅の違いが3分でわかる|地図と年表で見る朝鮮半島の三国時代『朱蒙』『善徳女王』『階伯』。韓国時代劇を見ていると、高句麗・百済・新羅という3つの国が次々に出てきます。 でも「結局どこにあって、何が違うの?」と聞かれると、…

では、4本の道を順に見ていきます。

青銅器の道──同じ青銅で、主役が変わる

上流から主役見る場所
中国祭りの。鼎や爵など、食器の形が中心東洋館 3階
朝鮮半島剣と鏡。細形銅剣、多鈕細文鏡東洋館 5階
日本マツリの道具。銅剣は刃がなくなり、銅鐸は大きくなる平成館 1階
鍋が国だった──中国の青銅器は、なぜ食器が主役なのか日本の博物館で青銅器といえば、銅鐸・銅剣・銅鏡です。 鳴らすもの、見せるもの、映すもの。どれも「中身を入れない」道具です。 ところが中国の青銅器の展示に行くと、… 銅剣はなぜ刃がなくなったのか──形でたどる、弥生の青銅器博物館の弥生コーナーに、大きな銅剣が並んでいることがあります。 長さは50センチほど。幅が広く、堂々としている。ところが説明を読むと、こう書いてあります。 「刃…

仏像の道──2000年の道のりを、1日で歩ける

上流から見どころ見る場所
インド天部の実家。腕や顔がたくさんある神々東洋館 地下1階
ガンダーラ仏像の顔のはじまり東洋館 2階
中国衣が中国の官服に着替える東洋館 1階
朝鮮半島日本のすぐ上流東洋館 5階
日本着地点本館 1階 /法隆寺宝物館

インドの多面多臂を見て、ガンダーラの深い彫りを見て、中国で衣が変わるのを見て、夕方に本館で日本の仏像の前に立つ。2000年の道のりを、1日で歩けるわけです。
奈良や京都のお寺で見られるのは、この道の着地点です。上流から着地点までを1か所でたどれる場所は、なかなかありません。

知識ゼロからの仏像入門——お寺めぐりが10倍おもしろくなる3つの視点お寺や博物館で仏像の前に立って、「立派だなあ」で終わってしまう。ありがたい気持ちにはなるけれど、それ以上進めない。 でも、見るポイントを知っているだけで、目の前…

やきものの道──海を渡った技術と、あこがれの茶碗

上流から主役見る場所
中国色をどこで出すか。青磁・白磁・染付東洋館 3階
朝鮮半島高麗青磁と粉青沙器。日本の茶人があこがれた茶碗の「実家」東洋館 5階
日本朝鮮陶工の技術から、有田の磁器が生まれる本館 1階
中国陶磁の見分け方|色をどこで出すかで1300年がわかる博物館の中国陶磁の部屋は、たぶん一番くじけやすい場所です。 唐、宋、元、明、清。1300年分のやきものが一列に並んでいて、キャプションには聞いたことのない窯の名… 高麗青磁と粉青沙器──日本の茶碗の「実家」をたずねる博物館の朝鮮半島コーナーで、金ぴかの装身具のケースを抜けると、やきものが始まります。 ここは時代の幅がとても広い。原三国時代から朝鮮王朝まで、1500年分が一続… 日本のやきもの2000年・磁器400年──有田焼を生んだ、朝鮮陶工の技術博物館のやきものの部屋は、正直むずかしい。 「青磁」「白磁」「炻器」「施釉陶器」。キャプションを読んでも、目の前のものとどうつながるのか分からないまま通り過ぎて…

ガラスの道──出発点は、中国よりずっと西

上流から白瑠璃碗タイプの碗(厚手の円形切子碗)見る場所
ペルシャガラスの器が作られる東洋館 2階
中国見つかったのは西域で1個だけ(形の違うものを含めても2個)
朝鮮半島1つも見つかっていない
日本古墳から出ている。そして正倉院の白瑠璃碗へ平成館 1階
2026年12月6日までは新沢千塚126号墳の特集

ほかの3本は、途中の国にもちゃんと品が残っている道でした。ガラスの玉は、中国にも朝鮮半島にも、たくさん残っています。

ところが白瑠璃碗タイプの碗は、通ってきたはずの中国や朝鮮半島にほとんど残っていないのに、日本にはある。どうやって届いたのかが、ガラスの道のいちばんの謎です。

正倉院の白瑠璃碗には兄弟がいる|古墳から出たペルシャ・ローマのガラスシルクロードの終着点は、日本でした。 奈良の小さな古墳から、青いガラスの皿と、透明なガラスの碗が出てきました。 皿はローマ、碗はペルシャ。 砂漠を越え、山を越え…

モデルコース:9:30〜17:00の時間配分

💡1日で全部は見られない、と最初に認める

トーハクの収蔵品は12万件を超えます。
そのうち常時出ているのは3千件ほど。それでも、1点3分で見たら150時間かかります。

つまり「全部見る」は最初から成立しません
だから回り方のコツは、順路ではなく「何を捨てるか」から決まります。

捨てる判断は、この3つで決めました。

  1. 本命を2つだけ決める … 今回は「平成館1階の考古」と「東洋館」
  2. 本命に時間の半分以上を使う … 7時間半のうち4時間50分をこの2つへ
  3. 迷ったら建物ごと捨てる … 部屋単位で迷うと決まらないので、建物ごと外す

今回は、黒田記念館と表慶館の展示を最初から外しました。特別展は前日に回しています。

先に全体像を置きます。この表だけ見れば回れます。

時刻場所見るもの
9:30〜11:40平成館 1階 考古展示室
※本館の中を通って行ける
旧石器・縄文・弥生・古墳
11:40〜12:00休憩・軽食東洋館の休憩スペースへ
特別展が混む時期は、レストランやカフェが行列になることも。軽食を持って行くと安心
12:00〜14:40東洋館(1階から上へ)中国・インド・ガンダーラ・朝鮮半島
14:40〜15:15法隆寺宝物館飛鳥時代の金銅仏
15:15〜15:45本館 1階(彫刻)日本の仏像
15:45〜16:50本館 2階日本美術の通史
16:50〜17:00ショップ・退館

太字が本命の2つです。ここに合計4時間50分。1日の3分の2を振っています。
展示室内は飲食できないので、軽食は休憩スペースかレストラン・カフェで。

【午前】平成館1階 考古展示室に2時間

💡 特別展の行列ができていても、考古展示室は並ばずに入れます。

朝いちばんに向かうのは、本館の奥にある平成館です。
理由は2つ。朝がいちばん空いているのと、ここがいちばん体力を使うからです。

考古展示室には、日本列島の3万年が、土の中から出てきたモノで時代順に並んでいます。旧石器や縄文から始まって、古墳時代のあとも、瓦や骨壺、経塚、お金と続きます。

時代ここだけ見る
旧石器石器の大きさ。時代が下るほど小さく鋭くなる
縄文土器の模様が時計がわり。玉は土・石・ヒスイなど、足元で手に入る素材だけ
弥生道具の用途。銅剣は刃があるか・横から見て薄いか、銅鐸は吊り手が飾りになっていないか
古墳(4世紀)副葬品の素材。鏡や石の玉が中心。ガラスの勾玉も出てくるが、形は縄文の勾玉のまま
古墳(5世紀)金の装身具、馬具、青いガラス小玉、そしてガラスの器。海の向こうの品が一気に増える。刀に文字が刻まれるのもこのころ(江田船山古墳の剣)
飛鳥・奈良古墳のかわりにが出てくる。火葬が始まり、骨を納める骨壺が現れる(ガラスの国宝も)
平安〜江戸お経を埋めた経塚、土の中から出てきたお金
ワカタケル大王とは誰か?|稲荷山鉄剣・江田船山大刀が語る5世紀の王日本の古代史には、推理小説みたいな話がいくつかあります。 そのなかでも私がいちばん好きなのが、これです。 熊本で100年近く読めなかった文字が、埼玉から出てきた… 経塚とは?56億7000万年後に宛てた手紙|末法思想と経筒平安時代の貴族たちが、山の頂上に穴を掘って、お経を埋めていました。 盗まれないように隠したのではありません。いつか掘り返すつもりでもありません。 宛先は、56億… 日本はなぜ中国のお金を使ったのか|皇朝十二銭と宋銭をわかりやすく日本で最初に広く使われたお金は、708年の和同開珎(わどうかいちん)です。 ところが日本の国は、958年を最後に銭を作るのをやめてしまいます。次に本格的な国産の…

💡 ちなみに、縄文・弥生・古墳の品は、本館2階の最初の部屋「日本美術のあけぼの」にも並んでいます。遮光器土偶のような、教科書でおなじみの名品が出ていることもあります。

これだけで、部屋を通り抜けるだけの見学が「変化を追う見学」に変わります。

東洋館は1階から上がっていく

考古展示室を出たら、東洋館へ。ここが今回のもう一つの本命です。

実は私は、エレベーターで5階まで上がって、降りながら見ました。ところが歩いてみると、各階の展示の順路と逆向きに歩く部屋が多くなってしまいました。なので、これから行く人には1階から上がっていく順番をおすすめします。階段がつらければ、階の移動だけエレベーターを使えば大丈夫です。

見る順階・部屋中身目安
11階 第1室中国の仏像20分
2地下1階 第11〜13室インド・東南アジアの彫刻30分
32階 第3室ガンダーラ/西域/西アジア・エジプト40分
43階 第5室中国の青銅器・墳墓30分
55階 第10室朝鮮半島の美術40分

合計およそ2時間40分。前の章の「海を渡ってきた4つの道」を思い出しながら歩くと、階を移るたびに話がつながります。

1階・中国の仏像

見るポイント:顔と衣
インドで生まれた仏像が、中国にたどり着いて中国風の衣に着替えた姿です。このあと地下と2階で「着替える前」の姿を見るので、ここで顔と衣を覚えておきます。

地下1階・インドと東南アジア

見るポイント:腕と顔の数
腕が何本もあり、顔がいくつもある神々は、日本のお寺の大黒天や弁才天など「〜天」の元の姿です。

同じフロアのクメール(アンコール)の仏像は、日本とは別の道で育った仏教。「同じ仏教でも、育つ土地でここまで違う」という比べ方ができます。

アンコールワットに落書きを残した日本人|彼はそこを祇園精舎だと思っていたカンボジアのアンコールワット。その回廊の柱に、日本語の墨書が残っています。 書いたのは、森本右近太夫一房(もりもと うこんだゆう かずふさ)という侍。年は寛永9…

2階 第3室・ガンダーラと西アジア・エジプト

見るポイント:1つの部屋で、3つの見方ができる

コーナーここだけ見る
ガンダーラ仏像の顔のはじまり。彫りの深いギリシャ風の顔を、1階の中国の仏像と比べる
古代ガラス色を組み立てて模様にしたガラス。126号墳のガラス皿の上流にあたる世界

エジプトのミイラは前945〜前730年ごろ。そのころ日本は縄文時代の終わり。時間の物差しに

ピラミッドができたころ、日本は縄文時代だった|世界史と日本史を並べた年表学校では、世界史と日本史を別々に習います。 エジプトのピラミッド、メソポタミアの楔形文字、中国の殷王朝。かたや日本は、縄文土器と竪穴住居。この二つが頭の中でつな…

3階 第5室・中国の青銅器と墳墓

見るポイント:器の形と模様

見るものここだけ見る
鼎(かなえ)3本足の大きな器。部屋でいちばん偉い器
饕餮文(とうてつもん)左右対称の大きな目が2つ。暗い部屋でも目だけ浮かぶ
模様の密度びっしり=殷/整理される=西周/細かくにぎやか=春秋戦国
俑(よう)・明器(めいき)お墓に入れた人形やミニチュアの家。埴輪と同じ「形を代わりに置く」発想

5階 第10室・朝鮮半島

見るポイント:午前に平成館で見たものと「同じ形」を探す
金の冠や耳飾り、馬具など、日本の古墳の副葬品と驚くほど似たものが並びます。午前に考古展示室を見てから来ると、その既視感がそのまま体験になります。

キャプションの時代名は、この表で日本の時代に置きかえてください。

朝鮮半島だいたい同じ頃の日本
青銅器・初期鉄器時代弥生時代
楽浪郡(前108〜313年)弥生時代の中ごろ〜古墳時代のはじめ
三国時代(高句麗・百済・新羅)・伽耶古墳時代〜飛鳥時代
統一新羅(676〜935年)飛鳥時代の終わり〜平安時代
高麗(918〜1392年)平安時代〜室町時代のはじめ
朝鮮王朝室町時代〜江戸時代
加耶・百済・新羅・高句麗の見分け方──金の冠は「身分証明書」だった博物館で朝鮮半島の展示室に入ると、ガラスケースの中に金色のものがずらりと並んでいます。冠、耳飾り、腰帯、靴。 正直に言うと、最初は全部同じに見えます。「昔の人は… 韓国時代劇でわかる朝鮮の屏風の読み方韓国の時代劇を見ていると、王が座る玉座の背後に、必ず同じ絵の屏風が立っています。 赤い太陽と白い月。真ん中に5つの山。手前に松の木と、流れ落ちる滝。 どのドラマ…

この順番が効く理由

中国の仏像(1階)→ インド(地下)→ ガンダーラ(2階)→ 中国の古代(3階)→ 朝鮮半島(5階)

仏像の源流を先に見て、最後は日本のすぐ隣の朝鮮半島で終わる。
東洋館を出れば、そのまま法隆寺宝物館と本館、つまり日本の着地点へ歩いていけます。

なお4階(中国の絵画・書)と5階の工芸室は、今回は通過。最初から予定に入れると、必ずどこかが破綻します。

【午後中盤】法隆寺宝物館という静かな部屋

東洋館を出たら、敷地のいちばん奥、静かなガラス張りの建物へ。

ここには奈良の法隆寺から明治時代に皇室へ献納された宝物、約300件が収められています。
中心は7世紀、飛鳥時代のもの。日本に仏教が入ってきて、まだ100年経っていない頃の品々です。

ここで多くの人が混同するのが、正倉院宝物との違いです。

法隆寺宝物館正倉院宝物
時代7世紀・飛鳥8世紀・奈良
ゆかり聖徳太子と法隆寺聖武天皇と東大寺
場所東京・上野奈良
見られる時期ほぼ通年秋の正倉院展など限られた時期

つまり、日本でいちばん古い仏教美術を、東京で、いつでも見られる場所です。
知られていないわりに、これはかなりすごいことだと思います。

暗い展示室に小さな金銅仏がずらりと並ぶ光景は、写真で見るより実物のほうが静かです。
モデルコースの35分では正直足りません。ここで時間を延ばしたくなったら、本館2階を削って構いません。

法隆寺宝物館の歩き方──四十八体仏の顔で、飛鳥から奈良へ東京国立博物館の敷地の、いちばん奥まったところに、水をたたえた池と静かな箱のような建物があります。 法隆寺宝物館です。 本館や平成館のにぎわいから少し離れている…

【午後後半】本館は1階の彫刻から、2階の通史へ

東京国立博物館 本館の大階段
本館の大階段。ここを上ると2階の時代順の展示です。(筆者撮影)

最後に本館へ入ります。

まず1階の第1室・彫刻。日本の仏像が集まっている部屋です。
東洋館で見た中国の仏像と見比べると、顔つきや衣の違いがはっきり分かります。

そのあと2階へ上がります。
2階は「日本美術の流れ」を時代順にたどる、トーハクの背骨にあたるフロアです。

⚠️2階の部屋番号は2026年4月から11〜20室に変わりました。
古いガイドブックの部屋番号とは合わないので注意。

2階を歩くときは、「これは誰が注文した作品か」だけに注目します。

時代注文したのは出てくるもの
飛鳥〜奈良国家仏像、写経
平安貴族絵巻、和歌の書
鎌倉〜室町武士と禅僧刀、水墨画
安土桃山天下人金の屏風
江戸町人浮世絵、着物

注文主が変われば、作品の中身も大きさも色も変わります。

まとめ

  • トーハクは6つの建物の集合体。日本の古代は平成館1階
  • 全部は見られない。本命を2つ決めて、そこに時間の半分以上を使う
  • 特別展は別の日に。並ぶ時間が読めない
  • 東洋館は1階から上がる(各階の順路と同じ向き)
  • 本館2階は「誰が注文したか」だけ見る
  • 座る場所は多いが、ネットはつながりにくい。予習記事は保存して持って行く

丸一日いても、まだ見ていない部屋が残ります。
それでいいのだと思います。また来る理由になりますから。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました🍵